これまでに我々は、子宮体癌、子宮頸癌においてcarbonyl reductase 1 (CBR1) の発現が低下している症例では有意に予後が不良である事を報告し、CBR1の強制発現でEMTと逆の間葉上皮転換(MET) が誘導されることも報告してきた。本研究では転写因子であるペルオキシソーム増殖応答性受容体α(PPARα) の活性剤であるクロフィブレート製剤の投与によりCBR1 の発現を増加させることができるか、さらにそれによりMET が誘導され、癌細胞の腫瘍増殖能、浸潤能、腫瘍形成能を抑制させ得るかをin vitro 及びin vivo にて検討している。 これまで、In vivoで子宮頸癌細胞株SKGII、及びSiHaの2種類のcell-lineにPPARαリガンドであるクロフィブレートを投与した。(投与濃度は100μM、500μM及び1000μM)処理後に細胞を回収し、CBR1のmRNA及びタンパク質の発現変化を解析したが、mRNAレベルでやや発現が高くなる傾向にあったが、両者とも有為な変化は認めなかった。またクロフィブレートを加水分解して得られた代謝産物であるクロフィブリン酸(Clofibric acid: CA)を同様に培養細胞に添加させたが、同様に発現変化は認めなかった。 細胞機能として増殖能、及び浸潤、遊走能の評価を行った。CA投与群では増殖能は有為に低下した。 クロフィブレートが生体に作用し、周囲微小環境に作用しCBR1の発現変化を誘導する可能性を評価するため、nude miceに子宮頸癌細胞株SKGIIまたはSiHaを移植し、腫瘍モデルマウスを構築した。これらのモデルにクロフィブレートを腹腔内投与し、腫瘍の形成能の変化を評価した。現時点ではクロフィブレートは腫瘍形成には有為に関連を認めなかった。
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