研究課題/領域番号 |
18K16805
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
淵 直樹 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (20727359)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | HTLV-1キャリア / 妊婦 / 経胎盤感染 |
研究実績の概要 |
①HTLV-1キャリア妊婦の末梢血、胎盤および臍帯血の試料集積を行う:本年度も引き続き検体を集積し、末梢血24例、胎盤22例、臍帯血19例集積した。②HTLV-1キャリア妊婦における末梢血、胎盤および臍帯血のHTLV-1プロウイルス量を測定し、HTLV-1感染の状態と周産期背景を調査する:これまでに集積したHTLV-1キャリア妊婦の妊娠中の末梢血、胎盤および臍帯血をセットとし、254例についてHTLV-1プロウイルス量をreal-time PCR法で定量した。キャリア妊婦254例中、140例(55.1%)の胎盤組織からHTLV-1プロウイスを検出した。この140例のうち、臍帯血中にもHTLV-1プロウイスを検出したのは6例(4.2%)であった。臍帯血陽性例のプロウイルス量は母体血や胎盤中プロウイルス量と相関しなかった。⑤経胎盤感染の分子機構を明らかにする:胎盤組織におけるHTLV-1感染細胞の局在を解析するために、HTLV-1 plus-strand mRNAを網羅的に検出可能なin situ hybridization法を確立した。同手法を用いてキャリア由来胎盤組織を解析したところ、胎盤中にプロウイルスが検出されたほぼ全ての検体でHTLV-1発現細胞が確認され、臍帯血陽性例では陰性例と比較して有意に発現細胞数が多かった。さらに、母児間を隔てる胎盤関門を構成する初代培養細胞(絨毛細胞、血管内皮細胞、間葉系細胞)を用いて、各細胞におけるHTLV-1感受性を検討した。血管内皮細胞や間葉系細胞と比較して絨毛細胞において有意にHTLV-1に対する易感受性が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検体集積状況は目標数を達し、これまでの集積した検体についてHTLV-1プロウイルス量測定を行い、新たな知見を得ることができた。また、経胎盤感染を示唆するような研究結果が得られた。しかし、母子感染追跡調査の進捗が悪く、最終的に母子感染が成立するかどうかが判明していない。そのため、③経胎盤感染の可能性の検証、ならびに④産道感染の可能性の検証が全く行えていない。次年度も引き続き行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
経胎盤感染を裏付ける研究(初代培養細胞を用いたin vitroの実験やin situ hybridization法の追加実験など)と、母子感染追跡調査は引き続き次年度も行う予定である。またこれまでの研究結果を英文誌にまとめる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由)経胎盤感染裏付けるための、間接的なin vitroの実験を行えていない。また、統計学的な有意差を示すために、解析ができていない多数の胎盤検体についてin situ hybridization法の評価が必要である。また、計上していたPCRにかかる試薬については次年度使用する予定である。 使用計画)本年度解析できなかった血液、臍帯血、胎盤のプロウイルス量の測定、および胎盤感染の可能性が示唆されたin situ hybridizationの追加実験、また初代培養細胞を用いたin vitroの実験を行う予定であり、申請した額は予定通り使用される。
|