研究課題
①HTLV-1キャリア妊婦の末梢血、胎盤および臍帯血の試料集積を行う:本年度も引き続き検体を集積し、末梢血52例、胎盤51例、臍帯血51例を集積した。③、④経胎盤感染及び産道感染の可能性の検証として、集積された検体の栄養方法や胎盤・臍帯血プロウイルス量ならびに分娩様式と母子感染の有無とを調査する:本研究において母子感染の有無が判明している44例において、人工栄養を選択した例は34例(77%)、短期母乳栄養は8例(18%)、長期母乳栄養は2例(5%)であった。44例のうち母子感染が成立した児は5例(11.3%)であった。44例のうち胎盤組織中にHTLV-1プロウイルスを認めた例が24例(55%)、認めなかった例が20例(45%)であった。人工栄養を選択し、かつ胎盤内にHTLV-1プロウイルスを認めた18例のうち母子感染が成立していたのは2例(11.1%)である一方、人工栄養を選択し胎盤内にHTLV-1プロウイルスを認めなかった16例のうち母子感染が成立していたのは1例(6.3%)であり、両群において有意な差は認めなかった(Chi-squared test, p=0.618)。臨床データを用いて経胎盤感染の可能性について評価をしたが、現時点での母子感染追跡調査数では全体の症例数が少ないことから母子感染が成立した例も少ないため、経胎盤感染についての統計学的な評価は困難であった。しかし、症例数が増えることで計画通りに検証することが可能であると思われる。
3: やや遅れている
検体集積ならびに母子感染追跡調査の結果は順調に進捗している。HTLV-1経胎盤感染について英誌に論文投稿を行なった(HTLV-1 targets human placental trophoblasts in seropositive pregnant women. J Clin Invest. 2020)。新型コロナウイルス感染症のため母体血、臍帯血、胎盤のプロウイルス量の測定などが滞っている。現時点では母子感染追跡調査の結果の例数が少なく、③経胎盤感染の可能性の検証、ならびに④産道感染の可能性の検証として有意な結果が得られていないが、母子感染追跡調査の例数を増やし次年度に再検証を行う予定である。
母子感染追跡調査の結果は順調に集積しつつあるため、それらの集積されたデータを検証することで、HTLV-1の経胎盤感染ならびに産道感染の有無について評価する。
理由)新型コロナウイルス感染症のため母体血、臍帯血、胎盤のプロウイルス量の測定などが滞っている。計上していたPCRにかかる試薬については次年度使用する予定である。使用計画)本年度解析できなかった血液、臍帯血、胎盤のプロウイルス量の測定を行う予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Clinical Investigation
巻: 130 ページ: 6171-6186
10.1172/JCI135525