研究実績の概要 |
【緒言】高プロラクチン(PRL)血症は、無排卵性不妊の原因となる。本研究では、高PRL血症を呈する若年子宮内膜癌患者の発癌機構を解明することを目的として、正常子宮内膜腺ならびに子宮内膜癌細胞に対してPRLが与える増殖能ならびに下流シグナルの変化を検討した。 【方法】月経周期における正常子宮内膜に対してPRL受容体(PRLR)抗体ならびにER-α抗体を用いて免疫組織化学を行った。増殖期子宮内膜を由来とするEM-E6/E7/TERTとIshikawa細胞を用いて、次の実験を行った。PRLを細胞に添加し、PRLR, pJAK2 , その下流シグナル(MAPK, PI3K, and STAT), ER-αの発現をウエスタンブロッティングにて評価した。MAPK阻害剤であるU0126を前処置した。MTSアッセイにて、PRL添加の有無によりエストラジオール(E2)添加後の増殖能の変化を評価した。 【結果】子宮内膜腺におけるPRLRの発現は、分泌期より増殖期で有意に増加した。月経周期において、子宮内膜腺におけるPRLRの発現は、ER-αの発現と正に相関した。PRL添加により、両細胞株において、PRLR、ER-αは有意に増加し、pJAK2とMAPKが活性化された。EM-E6/E7/TERTのみで、PI3KとSTATが活性化した。両細胞株において、E2による増殖能の増加は、PRL添加によりさらに有意に増加した。U0126により前処置したIshikawa細胞では、これらの変化が全て抑制された。 【結語】高PRL血症の無排卵周期の女性では、E2の存在のもと、PRLが増殖期子宮内膜腺に長期間作用し、子宮内膜腺のさらなる増殖を促すことが示唆された。PRL-PRLRシグナルにおけるMAPKは、高PRL血症を呈する子宮内膜癌患者では、癌増殖において重要な役割を担っている。
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