リンチ症候群の家族歴を満たす子宮内膜癌ならびに卵巣癌の重複癌患者2名の腫瘍組織を免疫組織学的に検討した。ミスマッチ修復(MMR)蛋白のうちMSH2とMSH6に対する抗体を用いて、子宮内膜ならびに卵巣の免疫組織学的染色を行った。子宮内膜癌の細胞は、いづれもMSH6ならびにMSH2の発現が低下していた。卵巣癌病巣は、子宮内膜症性嚢胞と連続しており、どちらも病巣もMMR蛋白の発現が低下していた。さらに肉眼的に正常の片側卵巣にも初期の卵巣癌病巣がみられ、子宮内膜症病巣と連続していた。卵巣内には、多くの子宮内膜症病巣がみられたが、MMR蛋白が欠失していた子宮内膜症病巣は、癌と連続していた子宮内膜症病巣のみで、他の全ての子宮内膜症病巣はMMR蛋白を発現していた。 リンチ症候群の女性において、卵巣の子宮内膜症病巣は、MMR蛋白を発現している病巣としていない病巣が存在し、癌はMMR蛋白が欠失した子宮内膜症病巣より発生することが示唆された。
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