研究課題
若手研究
本研究では、小胞体シャペロンであるカルレティキュリン（CRT）が胎盤形成の元となるシンシチウム化に果たす機能的役割について解明することを目的とした。BeWo細胞においてCRT発現抑制がE-カドヘリンの発現変化を介してシンシチウム化能を低下させていた。また小胞体ストレスによりCRTの細胞外分泌が誘導され、過剰に分泌されたCRTがβ-hCG分泌抑制を引き起こした。以上より、CRTは胎盤形成におけるシンシチウム化に影響を及ぼし、妊娠高血圧腎症の病態に関与する可能性が示唆された。
産婦人科
妊娠高血圧腎症は高血圧・蛋白尿・浮腫を主徴とする妊娠合併症である。確実な治療は妊娠の終了しかなく，母体や児の予後に大きな影響を与える。胎盤形成不全が関連しているといわれているが、確立された病態メカニズムはない。本研究により、CRTが妊娠初期胎盤形成におけるシンシチウム化に促進的な役割を果たしていると考えられた。またシンシチウム化不全を基盤とする妊娠高血圧腎症の病態にCRTが関与している可能性が示唆された。本研究が妊娠高血圧腎症の新たな治療法確立の基盤となることを期待する。
