研究課題
本研究の目的は、遺伝性婦人科悪性腫瘍としての子宮体癌、卵巣癌における、遺伝子変異高リスク群の抽出方法の開発、その臨床病理学的特徴の解明、遺伝子変異およびエピゲノム異常による発癌機構の解明およびそれに伴う新たな治療戦略の構築である。昨年度、卵巣癌においてLynch症候群ハイリスク群の拾い上げ及びその臨床病理学的特徴としてマイクロサテライト不安定性(MSI)、ミスマッチ修復(MMR)タンパク発現、MMR遺伝子のプロモーター領域のメチル化の解析を行い、論文で公表した。見出されたハイリスク群には、子宮体癌卵巣癌重複例が多く、次に重複癌と遺伝性腫瘍との関連性に着目した。当院で加療した子宮体癌卵巣癌の重複癌症例33名を対象として、臨床病理学的背景、MSI検査、MMRタンパク発現解析を行い、8例がMSI-highまたはMMRタンパク発現低下を認め、うち5名が遺伝学検査からLynch症候群の確定診断となった。この内の4症例において、子宮体癌、卵巣癌の両原発巣からDNAを抽出し、次世代シークエンサーにより全エクソーム解析を行った。その結果、Lynch症候群の背景を反映し、全ての解析症例において子宮体癌卵巣癌共に10Mutations/Mbを超える高い腫瘍遺伝子変異量を有していた。またその変異遺伝子を解析すると子宮体癌卵巣癌において共通する遺伝子変異、特有の遺伝子変異の蓄積が示唆された。さらに高腫瘍変異量、MSI-high癌と高腫瘍免疫原性に注目して、両原発癌における免疫細胞の浸潤やPD-1/PD-L1を含めた腫瘍免疫関連分子の発現解析を行なっている。今後、遺伝学的背景のない重複癌症例、遺伝学的背景のある子宮体癌、卵巣癌単独症例などに対する追加解析により、遺伝性症例における発癌の鍵、子宮体癌、卵巣癌の発癌、免疫療法を含めた新規治療法の開発・発展へつながると期待される。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)
Cell Death & Disease
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