研究実績の概要 |
本研究は、インスリン抵抗性改善薬であるpioglitazoneがヒト子宮内膜脱落膜化へ与える影響と、そのターゲット遺伝子であるPeroxisomeProliferator-Activated Receptor gamma (PPARγ)について解析した。 本研究では患者より同意を得て子宮内膜を採取し、cAMPおよびプロゲステロンを添加し細胞をin vitroで脱落膜化させた。脱落膜化過程でpioglitazoneを添加し、PPARγと脱落膜化マーカー(PRL, IGFBP1)の発現を分子解析した。 PPARγの発現は脱落膜化に伴い著しく低下した。PPARγ agonistであるpioglitazoneを添加すると濃度依存性にPPARγの発現は亢進し、PRL・IGFBP1の発現は抑制された。 以上よりインスリン抵抗性関連遺伝子であるPPARγは脱落膜化の制御に重要であることが示された。インスリン抵抗性改善薬であるpioglitazoneは高濃度ではPPARγの発現亢進を通して脱落膜化を抑制する可能性があるが、通常の内服量で得られる血中濃度では子宮内膜の脱落膜化への影響は限定的と考えられた。 令和4年度では、さらに子宮内膜脱落膜化におけるPPARγの機能解析を行った。ヒト子宮内膜細胞をsiRNAを用いてPPARγおよびその補酵素であるPPARGC1Aをknockdownし脱落膜化させた。コントロール群とknockdown群でmRNAの発現量をRNA-seqを用いて定量し、GO解析・pathway解析を行った。いずれの遺伝子も、ヒト子宮内膜においてmTORシグナル経路、PI3K-Aktシグナル経路といったインスリン刺激伝達に重要な経路を制御していることが分かった。
|