研究課題/領域番号 |
18K16821
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
石田 剛 川崎医科大学, 医学部, 講師 (90509225)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 早産 / 脳障害 / 神経発達 / 感染 |
研究実績の概要 |
早産の多くが子宮内の局所的な炎症が原因と言われている。また、早産児の神経障害の予後は感染症が重要な要因であるが、神経障害が未熟性によるものなのか、感染症によるものなのかは現時点では知られていない。大脳皮質において胎生期から生後にかけて神経前駆細胞 ( Neural progenitor cell, NPC ) は時期に応じて神経細胞、続いてグリア細胞へ分化し、最終的な脳の構造が完成する。NPC から分化する細胞運命の決定に着目し、子宮内感染のモデルマウスを用いて検証する予定である。 今回の研究では、早産・子宮内感染モデルマウスは既知のLPS(Lipopolysaccharides)投与モデルを導入することによって、流産に至らないLPS投与量上限を投与したマウスにおいて、大脳皮質における神経細胞の細胞運命の変化を正常群と比較し、出生後の行動等に及ぼす影響に関して解析する。胎生16日目(E16)の妊娠マウスを腹腔内麻酔下に、開腹して妊娠子宮を確認後、胎児間の卵膜外に必要量のLPSを投与した。 平成30年度の予定では早産モデルマウスを用いて大脳皮質の神経発生の変化に着目して研究を継続させる予定であった。実際にはLPSを用いたこれまでの報告よりも更に100倍以上希釈したLPSを投与しなければ生存児は得られなかった。流産に至らないLPSの投与量の境界を同定し、それよりも高濃度の場合と含めて、投与後の胎児、及び新生児マウスの脳組織における炎症反応の増減をリアルタイムPCRにより確認した。流産に至らないLPS投与量上限を投与したマウスの脳組織において、投与した翌日までは炎症反応の増加が期待される結果であった。しかし出生直後の脳組織においては炎症反応の発現に差は認めないようである。現在更にサンプル数を増やして検討中である。 来年度はLPS投与後の胎児及び新生児マウスの脳組織を観察も予定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回我々が行った実験では、LPSを用いたこれまでの報告よりも更に100倍以上希釈したLPSを投与しなければ生存児は得られなかった。その原因としてLPSの投与方法や手技的な問題、LPS製剤の純度の違いがあると考え、検証を続けた。更なる濃度検討により0.01~0.1μg/damの間に流産しない境界があり、0.1μg/dam以上では流産することを確認した。これによりLPSを0.01μg/dam(低濃度群)、0.05μg/dam(境界群)、0.1μg/dam(高濃度群)に分けて検証することにした。 それぞれのLPS投与濃度において、LPSを投与した翌日の胎児マウスと、出生直後の新生児マウスの脳組織中の炎症反応の発現をリアルタイムPCRを用いて測定した。炎症マーカーとしてはcox2、TNFα、IL-1β、IL-6の発現を検証した。その結果、境界群においてはE16で取り出した脳での炎症反応は上がっていた。それに対し、出生直後では炎症反応の増加は認めなかった。炎症マーカーの中で特にIL-6が最も顕著に発現の増加を認めた。この結果からLPSを投与した次の日は炎症反応が高いが、出生後はむしろ低下していた。 これまでの結果からE15でLPSを投与し、E16で取り出した脳の炎症反応が高いのは自然免疫によって直ちに炎症性物質が代謝された結果であると考えられる。そしてE15でLPSを投与し、P1~2で取り出した脳の炎症反応がむしろ下がっていた理由は免疫反応が働き炎症が治まった後であると考えている。現時点ではサンプル数が少ないことや、初期の研究手技が安定しないことから、まだ有意差が見られない可能性も考えられ、更なる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
少なくともLPSを投与した直後に炎症反応の上昇は確認されたものの、実際の早産症例の様に、慢性化した炎症反応上昇のモデルの確立が必要であると考えている。その為にLPSのデポー製剤の作成や、投与方法の変更を検討中である。これにより、出生後の脳においても炎症反応の上昇が確認できれば、早産に至らない程度の炎症反応の上昇が神経発生に及ぼす影響を検討できると思われる。 流産に至る下限の量が今回の検討である程度判明した。今後はよりサンプル数を増やして差が出るかを検討する。現時点では一時的な炎症反応上昇のモデルマウスであるが、これによる神経発生への影響も検討してみる価値があるかもしれない。最終的には早産に至る前の脳組織と、慢性炎症が神経発育にどの様に影響するかを調べ、早産による神経発達に障害を及ぼす原因が早産における感染・ 炎症なのか、未熟性であるかについて解析していく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在研究が遅延しており、2018年度にできなかったLPS投与後の胎児及び新生児マウスの脳組織の観察の際に行う、免疫組織学検査などで使用予定の費用である。
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