研究課題/領域番号 |
18K16822
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
漆山 大知 福岡大学, 医学部, 助教 (50790028)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腟内細菌叢解析 / 16S rRNA遺伝子 / 絨毛膜羊膜炎 / 切迫早産 / 機械学習 / 妊娠延長期間 |
研究実績の概要 |
当初の計画通り、16S rDNA amplicon sequencingで腟内細菌叢解析を行った。具体的には、2014年~2016年に切迫早産の診断で入院した未破水の日本人妊婦83例を対象として、入院時の腟分泌物を採取した。分娩時の絨毛膜羊膜炎(CAM)のBlanc分類に基づいて、CAM群(Stage II度以上)46例とnon-CAM群(Stage I度以下)37例の2群でケースコントロール研究を行った。腟分泌物 中のDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子のV1V2領域をターゲットとして、16S rDNA amplicon sequencingを行い、α多様性解析、UniFrac距離を用いたβ多様性解析、細菌組成解析を行った。CAM群に関連の強い菌を絞り込む際に機械学習の一つであるRandom Forestを用い、ROC曲線を用いて診断精度を評価した。CAM群のα多様性指数は、non-CAM群のそれよりも有意に高かった。Weighted UniFrac距離のPERMANOVA検定では有意差がなかったが、Un-weighted UniFrac距離のそれでは有意差があった。Random forestでCAM群と関連の強い上位20菌種を絞り込み、様々なスコアリング法を作成し、最も高精度だったスコアリング法を決定した。そのスコアリング法によって分けられる2群では、妊娠延長期間で有意差を認め、平均値・中央値の比較で約二週間の差を認めた。つまり、この方法によってハイリスク群を同定し、治療することにより、約2週間の妊娠延長を見込めることを示唆する結果であった。また、先行研究で同定したCAMの病原菌と考えられた菌種群と合わせて、網羅的に強い抗菌作用を示し、妊婦と胎児にも安全に使用可能な抗菌薬の候補を同定した。本研究成果の一部を日本産科婦人科学会で発表し、特許出願を終えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の詳細は論文にて発表予定で現在論文作成中である。 本研究では当初予定していた方法とは若干異なるものの、治療法の候補を絞り込むことができた。 さらに、その治療効果の見込みが高い事がわかった。 現在、本研究成果に基づく臨床研究を共同研究者らとともに計画中である。
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今後の研究の推進方策 |
上述の如く、現在、本研究成果に基づく臨床研究を共同研究者らとともに計画中である。 当初の仮説通り、膣内のマイクロバイオームには感染性早産の原因となる微生物、並びにリスク評価に資する検出パターンが存在するはずであり、その微生物が細菌そのものであれば治療可能である。 機械学習は人工知能(AI)に繋がる手法であることからも、今後の研究によって精度の向上なども大いに期待できる。 将来的には、絨毛膜羊膜炎やそれに伴う重篤な早産、低出生体重児、新生児合併症、長期予後を左右する慢性肺疾患や発達障害などを著明に減少させることを目標とし、出生数の増加・女性の社会進出・社会保障費の削減など、さまざまな形で社会貢献に繋がるよう研究を進めていく。
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