研究課題/領域番号 |
18K16823
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
丸 喜明 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 発がん制御研究部, 研究員 (30742754)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 卵巣がん / 漿液性癌 / 3次元培養 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
マウス由来卵管オルガノイドへレンチウイルスを用いてcDNAおよびshRNAを導入し、免疫不全マウス皮下での腫瘍原性を評価した。卵巣漿液性癌ではTP53変異を90%以上の症例で認めるため、Trp53欠失を軸に検討し、予備検討ですでに腫瘍形成を認めていた遺伝子異常の組み合わせについては再現性を確認した。卵管オルガノイドのTrp53単独の欠失ではヌードマウス皮下において腫瘍原性は認められなかったが、他の遺伝子異常をひとつ追加することで腫瘍形成を認めた。具体的にはApc欠失、Pten発現抑制、Pik3ca活性化、Kras活性化である。一方、Trp53欠失を伴わない発がん誘導としてKras活性化およびPik3ca活性化にそれぞれCdkn2a発現抑制、Pten発現抑制を組み合わせて発がん誘導を試みた。いずれも単独の異常では腫瘍形成を認めず、Kras活性化とCdkn2a発現抑制を組み合わせた場合のみ腫瘍が誘導された。shRNAを用いた実験についてはoff-target効果を否定するために別のshRNAクローンを用いて発がん誘導を行ったところ、同様に腫瘍形成を認めたため、現在誘導された腫瘍の組織学的評価を行っている。一方で、卵管上皮細胞に対する変異型p53の発がん性を評価する目的で変異型Trp53コンディショナルノックインマウスを新規に購入し、実験に必要なマウスを作出するため、他の遺伝子改変マウスとの交配を行った。 以上、マウス由来卵管オルガノイドへin vitroでの遺伝子導入および免疫不全マウス皮下での腫瘍原性の評価により、卵管上皮の発がんにはp53欠失が重要な役割を担っていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に必要な遺伝子改変マウスを作出するため、変異型Trp53コンディショナルインマウスと他の遺伝子改変マウスとの交配を行った。しかしながら、目的のマウスであっても雌マウスでなければならず、当初の計画よりやや遅れていた。しかし、徐々に実験に必要なマウスの準備が整ってきており、以後順調に発がん実験が実施可能なことが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
マウス由来卵管オルガノイドでTrp53欠失と様々な遺伝子異常を組み合わせることで、腫瘍形成が認められた。組織学的には嚢胞状病変、上皮内腺癌、腺癌、癌肉腫など多彩な像を呈していた。今後は、皮下腫瘍の免疫組織化学染色、皮下腫瘍由来オルガノイドから抽出したゲノムDNAおよびRNAを用いたCNVや遺伝子発現解析を行い、本実験系で誘導された腫瘍がどの程度ヒト卵巣がんを再現しているかを検証する。また、変異型Trp53コンディショナルノックインマウスを用いて同様の実験を行い、発がん性を評価する。さらに、卵巣由来オルガノイドに遺伝子導入を行い、卵管由来オルガノイドの実験結果と比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 年度末に購入した物品の納品が間に合わなかったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 新年度に入り購入した製品が納入されたため、その支払いに使用する。
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