研究課題
野生型胚盤胞を宿すマウスの子宮腔内洗浄液を、β-catenin完全欠損胚のみを宿すマウスの子宮腔内に注入したところ、着床かつ正常な胚発生が誘導された。以上より野生型胚盤胞が、着床を促進する因子を放出している可能性が示唆された。そこでβ-catenin完全欠損胚盤胞とコントロール胚盤胞を比較したマイクロアレイ遺伝子発現解析を行ったところ、β-catenin完全欠損胚盤胞で発現が低下する4つのサイトカインが候補因子として明らかとなった。サイトカインの機能解析として、マウス子宮腔内にサイトカイン4因子を注入したのち、子宮内腔液を回収し、ウエスタンブロット(WB)によりLIFの分泌の有無を検出した。陰性コントロールとしては、ハンクス溶液(HBS)を子宮腔内に注入した。サイトカイン4因子を注入した群において、LIFの分泌が検出された。また、HBSの注入群においてもLIFの分泌が検出されたが、その分泌量は少量であった。理由として、子宮腔内注入時の物理的な刺激によるLIF分泌の可能性が考えられたが、サイトカイン4因子を注入した群において、有意に分泌量が多いとの結果が得られた。続いて、各々のサイトカンのLIFの分泌における関与を解析するため、1因子ずつ減らしたサイトカインの混合液を子宮腔内に注入したところ、2因子を除いた群において、LIFの分泌が減少するとの結果が得られた。以上より子宮からのLIFの分泌には胚盤胞から分泌されるサイトカイン2因子による刺激が重要であるとの結果が得られた。
3: やや遅れている
LIF分泌を認める子宮内膜上皮細胞および間葉系細胞の共培養系構築に時間を要しているため。
特定したサイトカインが、着床に果たす役割を解明するため、子宮内膜上皮細胞および間葉系細胞の共培養系によるさらなる解析を行う。また特定した着床促進因子の遺伝子発現がWnt/β-cateninシグナル経路によって制御されることを明らかにするため、ルシフェラーゼアッセイを行う。ルシフェラーゼ遺伝子の上流に、特定した因子のエンハンサー領域を挿入したベクターを構築する。共発現させるβ-cateninおよび4種類のTCF/LEF発現ベクターはすでに構築済みである。
(理由)試薬の納品が年度内に間に合わなかったため(使用計画)消耗品費として使用する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Laboratory Investigation
巻: 99 ページ: 200-209
10.1038/s41374-018-0145-1
Heliyon
巻: 4 ページ: e00944
10.1016/j.heliyon.2018.e00944