研究課題/領域番号 |
18K16824
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
祝井 麻希 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 細胞医療研究部, リサーチアソシエイト (70645267)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 着床 / β-catenin / LIF / サイトカイン / 子宮 |
研究実績の概要 |
我々の研究から主にわかっていることは、(1)β-catenin欠損胚(β-catenin欠損精子とβ-catenin欠損卵から体内で発生した胚)は、母体側の着床応答(LIFの分泌)を誘起できない、(2)野生型胚盤胞を宿したマウスの卵管膨大部に溜まった卵管内液を、β-catenin欠損胚を宿したマウスの子宮腔内に注入すると、着床に成功して正常な胚発生が進む、の2点である。もちろん、β-catenin遺伝子を欠損しているため、出生には至らないものの、これらの結果から、野生型胚盤胞から、着床を促進する因子が放出されると推測される。これまで、β-catenin欠損胚盤胞とコントロール胚盤胞(floxed/floxed)を比較したマイクロアレイ解析を行ったところ、β-catenin欠損胚盤胞で顕著に発現が低下する4つのサイトカインを同定した。そこで、これらのサイトカインのどれか(または、すべて)によって子宮(上皮細胞または間葉系細胞)からLIFが分泌されることを明らかにすることが本研究の中心テーマである。今年度も昨年度に引き続いて、マウス子宮腔内にサイトカイン4因子を注入した後、子宮内腔液を回収し、ウエスタンブロット解析によりLIFの分泌の有無を検出した。さらに、特定した着床促進因子の遺伝子発現がWnt/β-cateninシグナル経路によって制御されることを明らかにするため、ルシフェラーゼアッセイについても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も昨年度に引き続いて、マウス子宮腔内にサイトカイン4因子を注入した後、子宮内腔液を回収し、ウエスタンブロット解析によりLIFの分泌の有無を検出した。陰性コントロールとして、ハンクス溶液(HBS)を子宮腔内に注入した。昨年度と同様に、4つのサイトカインを同時に注入した群において、LIFの分泌量が多くなる傾向が確認された。また、1因子ずつ減らしたサイトカイン混合液を子宮腔内に注入したところ、2因子を除いた群において、LIFの分泌が減少する傾向が認められた。ただし、子宮内液の採取量の個体差や、時にはHBSだけを入れたチップによる物理的刺激から、LIFの分泌は誘導されてしまった。この問題点を克服するためには子宮内膜上皮および間質細胞の培養系の構築が急務である。そのため、マウスの子宮内膜上皮および間葉系細胞の共培養系の構築を試みた。昨年度同様に、ある程度の傾向は確認されたものの、細胞を培養する条件(マウスの週齢、培養する細胞数、サイトカインを添加してから培養液を回収する時間)によって結果が大きく異なり、再現性が乏しかった。何よりも、ウエスタンブロット解析によってマウスLIFを検出することに適した抗体がないことが一番の問題点である。
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今後の研究の推進方策 |
特定したサイトカインが、着床に果たす役割を解明するため、マウスの子宮内膜上皮細胞および間葉系細胞の共培養系によるさらなる解析を行う。一方、マウスLIFを検出することに適した抗体はないものの、ヒトLIFについては適した抗体が販売されている。そこで、マウスの子宮内膜ではなく、ヒトの子宮内膜を用いた培養系によって、LIFの分泌を検出することを検討する。そのために、ヒトの子宮内膜上皮および間葉系細胞の長期培養系を構築中の慈恵医科大学・医学部・産婦人科教室のグループとの共同研究を進める予定である。さらに、特定した着床促進因子の遺伝子発現がWnt/β-cateninシグナル経路によって制御されることを明らかにするため、ルシフェラーゼアッセイについても、進める予定である。ルシフェラーゼ遺伝子の上流に、特定した因子のエンハンサー領域を挿入したベクターをすでに構築済みである。共発現させるβ-cateninおよび4種類のTCF/LEF発現ベクターもまた構築済みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)試薬の納品が年度内に間に合わなかったため (使用計画)物品費として使用する。
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