母体の同種免疫異常によって引き起こされる胎児の臓器障害では、非常に予後が悪く、重症の場合は救命も困難となることがある。母体免疫が関与することから免疫抑制治療が行われているが、治療の免疫学的メカニズムは明らかではなく、治療効果の目安となる指標も存在しない。本研究では、同種免疫異常が関与する妊娠病態において、母体免疫能が正常妊娠経過と比較し病状とともにどのように変化・推移していくのかを捉えることを目的とする。具体的には、①正常妊婦における免疫細胞機能の推移、②同種免疫性疾患妊娠における無治療時の免疫細胞機能の推移、③同種免疫性疾患妊娠における免疫抑制療法施行時の免疫細胞機能の推移、について比較検討を行う。 平成30年度に倫理承認を得た「重症同種免疫性疾患と母体免疫細胞機能・代謝産物との関連解析」について、当センターと共同研究施設における①正常妊婦、②血液型(RhD型)不適合妊娠、③新生児ヘモクロマトーシス既往妊娠の3群について継続的にリクルートを行い,検体採取と母体免疫細胞機能解析を実施した。本研究により、同種免疫異常の病態を反映する免疫学的バイオマーカーを明らかにし、その推移をもとに、適切な薬剤投与量と投与時期を決定できる治療を可能にする臨床応用へとつなげることが最終的な目的である。 平成30年度に本研究を開始したが、令和元年の年度末~令和4年度も引き続く新型コロナウイルスの感染流行(第1~7波)による影響に伴い症例リクルートは滞ったものの研究期間を延長し、研究当初より新生児ヘモクロマトーシス症例において6例、血液型不適合妊娠においては計20例、コントロール妊婦では17例の症例登録・検体採取を達成し得た。 今後、新生児ヘモクロマトーシス症例の検体を更に加えたのちに、臨床マーカーとしての意義について検討を行う予定である。
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