研究課題/領域番号 |
18K16826
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
本藏 陽平 東北大学, 大学病院, 助教 (20810146)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 難聴 / 内耳 / 抗酸化能 / Nrf2 |
研究実績の概要 |
加齢性難聴や騒音性難聴は、近年、生活環境の変化や高齢化社会の進展に伴い患者数の増加が懸念されている疾病である。この難聴の主要因は、酸化ストレスによる内耳障害であるとされている。そのため、酸化ストレスに伴う内耳障害の有効な予防法や治療法を解明することを目的に本研究を行なっている。特に酸化ストレス防御において中心的役割を果たす転写因子Nrf2に着目して解析を進めている。これまでに本研究者は、ヒトにおいて騒音性難聴の発症とNrf2欠乏とに関連があることと、マウスでNrf2を活性化すると騒音性難聴を予防できることを報告した。 一方、Nrf2の内耳の局所での動態を解明することは、酸化ストレスによる内耳障害の病態を理解するために重要であると考えられるが、いまだ解明されておらず、本研究ではこの解明を目指している。これまで解明が困難であったことの理由は、内耳組織が骨に囲まれた微細な組織であることに加えて、Nrf2がストレス応答性の転写因子であることが挙げられる。つまり、Nrf2は非ストレス環境下では細胞質において Keap1-Cullin3ユビキチンE3リガーゼ複合体によりユビキチン化されプロテアソーム経路で直ちに分解されているものの、酸化ストレス環境下ではKeap1の不活性化の結果Nrf2は安定化し核に移行することで標的遺伝子群の発現を誘導する。このような動態を呈するため、組織学的に解析することが困難であった。 そこで、本研究ではNrf2の動態のモニタリングが可能となる遺伝子改変マウスを作成し、解析を開始した。今後、このマウスに各種酸化ストレスを付加して解析を進める方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Nrf2の内耳の局所での動態の解明が困難であったことの理由は、内耳組織が骨に囲まれた微細な組織であることに加えて、Nrf2がストレス応答性の転写因子であることが挙げられる。つまり、Nrf2は非ストレス環境下では細胞質において Keap1-Cullin3ユビキチンE3リガーゼ複合体によりユビキチン化されプロテアソーム経路で直ちに分解されているものの、酸化ストレス環境下ではKeap1の不活性化の結果Nrf2は安定化し核に移行することで標的遺伝子群の発現を誘導する。このような動態を呈するため、組織学的に解析することが困難であった。この課題を克服するため、本研究ではNrf2の動態のモニタリングが可能となる遺伝子改変マウスを作成し、解析を開始した。また、酸化ストレスマーカーとしての4HNEの免疫染色の条件検討は済んでおり、解析を開始している。さらに、内耳組織の障害の程度を組織学的に検討する手法も確立しており、解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
Nrf2の内耳での局在をモニター可能である遺伝子改変マウスは作成済であり、解析を開始している。また、酸化ストレスマーカーとしての4HNEの免疫染色の条件検討は済んでおり、解析を開始している。さらに、内耳組織の障害の程度を組織学的に検討する手法も確立しており、解析を進めている。つまり、現時点までに本研究に必要な解析手法はほぼ確立することができた。今後は酸化ストレスを付加する各種条件のもとで、長期飼育での加齢性変化、強大音曝露による騒音性変化、シスプラチン投与による薬剤性障害について解析を進める方針である。また、その研究結果をまとめ、学会報告するとともに論文として報告する方針である。この研究により、酸化ストレスに伴う内耳障害のメカニズムを解き明かすことが可能となり、様々な難聴の予防や治療法の解明の一助となることが期待される。この結果は、難聴が大きな社会問題となってきている本邦において健康長寿社会の実現のために役立つことが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、解析するための手法の確立に期間を要したため、実際の解析の際に必要な備品の経費が少なくて済んだ。次年度は本格的に解析を開始するために備品費用が十分に必要であるとともに、その結果を学会報告するための旅費にも使用する計画である。
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