遺伝子X発現による抗アポトーシス能獲得機構の解析を目的として、気道炎症の慢性化に伴う経時的な遺伝子X発現変動の解析を行った。気道組織中に存在するTpath2 細胞における炎症の進行に伴った遺伝子X の発現変動を解析した。慢性アレルギー性炎症を誘導したマウスの肺から経時的にTpath2 細胞を回収し、遺伝子X 発現の経時的な変化をリアルタイムPCR にて評価したところ、時間経過に伴って遺伝子Xの発現上昇が確認された。 次に、遺伝子Xによる細胞長期生存制御機構の解析を目的として、遺伝子Xの下流のシグナル経路の解析を行った。遺伝子Xを過剰に発現させたヘルパーT細胞、遺伝子X欠損マウス由来のヘルパーT細胞、および正常なヘルパーT細胞を用いてRNA-Sequenceを行い、遺伝子Xの発現変動によって発現が変化する遺伝子群を解析し、遺伝子Xの下流のシグナル経路の解明した。さらに、遺伝子Xにより直接制御される標的遺伝子の同定を目的として、Tpath2細胞における遺伝子XのDNAへの結合をChIP-Sequenceを用いて解析し、遺伝子Xの直接の標的遺伝子群の同定を行なった。 最後に、ヒト患者検体を用いた解析として、ヒトにおける慢性アレルギー性気道炎症性疾患として好酸球性副鼻腔炎患者の検体を用いて上記の遺伝子Xの発現に伴うと考えられる抗アポトーシス能獲得機構を示唆させる結果を得た。 本研究に関連する視点で今後も研究を進めることで、Tpath2細胞の新たな病原特異性が判明すれば、好酸球性副鼻腔炎のみならず、様々な慢性アレルギー性疾患の新規治療標的としての応用が十分に考えられた。
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