研究課題
HPVという革新的な予後予測因子の背景に存在する新たな発癌分子機構を探索し、リスク層別化による治療の最適化を行うため、申請者らはHPV感染とDNAメチル化の関係に着目した。170例の中咽頭癌に対して網羅的DNAメチル化解析の後にクラスター解析を行ったところ、中咽頭癌は4群に分類され、HPV関連中咽頭癌、HPV陰性中咽頭癌それぞれにおいて異なる2つのエピジェノタイプが存在することが明らかとなった。特にHPV(+)高メチル化群は予後良好と、HPV(-)中メチル化群は予後不良と有意に相関し、HPV(+)群のみならずHPV(-)群においても中等度リスクを反映するサブタイプが存在した。すなわち、これまで困難であった中咽頭癌の予後層別化が、エピゲノム情報により初めて詳細に予後層別化されることが明らかとなった。さらに、これらの各群を層別化する代表的マーカー遺伝子の探索とその妥当性を検証するために、パイロシークエンス法による解析を行った。高メチル化マーカーの感度は79%、特異度100%で、中メチル化マーカーでは感度88%、特異度100%であった。ROC曲線のAUC値はそれぞれ0.969、0.952と高精度のマーカーであることが確認された。これらのマーカー遺伝子を用いることで比較的簡便に層別化を行うことが可能となり、治療層別化の一助となる。これらの結果から、これまでに解明された分子経路に加え、独自の新規治療戦略の基盤が構築され、より明瞭な治療層別化の足がかりとなることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
臨床検体の収集も順調に進み、概ね順調に進んでいる。中咽頭癌凍結検体から抽出したDNAついて、ビーズアレイInfinium450kによる網羅的DNA異常メチル化解析を行い、中咽頭癌は4群に層別化することができた。特にHPV関連中咽頭癌、HPV陰性中咽頭癌それぞれにおいて異なる2つのエピジェノタイプが存在することを同定することができたため、それらのマーカー遺伝子を抽出し、パイロシークエンスによる妥当性の検証を行うことができた。パイロシークエンスによる検証には複数のマーカーを用いたため、十分な妥当性が検証できた。
中咽頭癌検体から抽出したDNAに対して、Target exon sequencingによる遺伝子変異解析を行ったため、その解析を進める。DNAメチル化により層別化された各群との比較検証を行うことで、予後との相関を含めた発癌分子機構の解明を行う予定である。これらの結果から、これまでに解明された分子経路に加え、独自の新規治療戦略の基盤が構築され、より明瞭な治療層別化の足がかりとなることが期待される
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Int J Mol Sci.
巻: 19 ページ: E3707
10.3390/ijms19123707.