研究課題/領域番号 |
18K16831
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中川 拓也 千葉大学, 健康疾患オミクスセンター, 特任講師 (50813531)
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研究期間 (年度) |
2022-12-19 – 2025-03-31
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キーワード | DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
HPVという革新的な予後予測因子の背景に存在する新たな発癌分子機構を探索し、リスク層別化による治療の最適化を行うため、申請者らはHPV感染とDNAメチル 化の関係に着目した。170例の中咽頭癌に対して網羅的DNAメチル化解析の後にクラスター解析を行ったところ、中咽頭癌は4群に分類され、HPV関連中咽頭癌、 HPV陰性中咽頭癌それぞれにおいて異なる2つのエピジェノタイプが存在することが明らかとなった。特にHPV(+)高メチル化群は予後良好と、HPV(-)中メチル化群 は予後不良と有意に相関し、HPV(+)群のみならずHPV(-)群においても中等度リスクを反映するサブタイプが存在した。同検体に対して施行したターゲットエクソンシークエンスでは、HPV(+)群、HPV(-)群それぞれの2群間に有意な遺伝子変異の違いは存在しなかった。すなわち、これまで困難であった中咽頭癌 の予後層別化が、エピゲノム情報により初めて詳細に予後層別化されることが明らかとなった。 さらに、これらの各群を層別化する代表的マーカー遺伝子の探索とその妥当性を検証するために、パイロシークエンス法による解析を行った。高メチル化マー カーの感度は79%、特異度100%で、中メチル化マーカーでは感度88%、特異度100%であり、高精度のマーカーであるこ とが確認された。これらのマーカー遺伝子を用いることで比較的簡便に層別化を行うことが可能となり、治療層別化の一助となる。これらの結果から、これまで に解明された分子経路に加え、独自の新規治療戦略の基盤が構築され、より明瞭な治療層別化の足掛かりとなることが期待される。これらの成果は2020年にInt. J. Cancer誌に掲載された。さらなる症例数を蓄積し、本研究成果の妥当性を検証中である。留学中の関連論文が2023年にCancersにpublishされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であるHPV関連中咽頭癌のDNAメチル化による層別化に成功するのみならず、それらが予後を反映することを明らかとした。これらの成果はInt. J. Cancer誌に掲載された。さらなる症例数を蓄積し、本研究成果の妥当性を検証中である。さらなる症例数を蓄積し、本研究成果の妥当性を検証中である。留学中の関連論文が2023年にCancersにpublishされた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は主にDNAメチル化に着目した研究であるが、その背景にある発癌分子機構の違いには依然不明な点が多い。この発癌分子機構を解明すべく、多角的な視点でHPV関連中咽頭癌の本態を明らかとしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたより試薬が節約できたことにより生じた未使用額が生じた。引き続き次年度の検体に対して試薬の購入に使用する予定である。
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