研究課題/領域番号 |
18K16833
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
明石 健 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (90779331)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血中循環腫瘍DNA / ctDNA / デジタルPCR / 頭頸部癌 / p16陽性中咽頭癌 |
研究実績の概要 |
本研究では、従来の方法と比べて非常に高感度かつ再現性高く遺伝子変異や増幅を検出することが可能なデジタルPCRを用いて血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の解析を行い、頭頸部がんの新規バイオマーカー、特にこれまで実用化されていない「治療効果判定」および「再発予測」のバイオマーカー確立を目的としている。 頭頸部がんの中でも腫瘍組織由来のDNA中にウイルス由来DNAが検出されることが明らかとなっているEpstein-Barrウイルス(EBV)関連上咽頭がんならびにヒトパピローマウイルス(HPV)関連のp16陽性中咽頭がんをまずは対象として症例集積および解析を行っている。p16陽性中咽頭がん症例では25例が集積され、初回治療開始前の時点で25例中14例(56%)においてctDNAを検出可能であった。上記について、第56回癌治療学会で報告した。さらに、ctDNAが検出された14例全例において、初回治療後にctDNAは消失した。14例のうち2例に再発を認めたが、いずれの症例でもctDNAの再陽性化が確認され、そのうちの1例では治療により再びCRとなり、ctDNAも再陰性化した。これらの結果からctDNAはバイオマーカーとしての有用性が示唆されることを第43回日本頭頸部癌学会で報告した。同内容について論文を作成し、現在、英文誌への投稿中である。 一方、EBV関連上咽頭がんはもともと疾患頻度が高くなく4例のみの集積であった。3例でctDNAが検出され(75%)、p16陽性中咽頭がんと同様にバイオマーカーとしての有用性が期待されるが、症例数が限られているため症例を増やしての検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
p16陽性中咽頭がんにおいてはctDNAが56%の症例で検出されたが、これは想定よりも低い値となっている。ctDNAの半減期が短かいこと、他の血中の細胞が壊れることによるゲノムDNAの放出などが原因と考えられる。採取した検体の保存状態、保存容器、解析までの時間に原因があると考えられ、とくに本研究では、侵襲性の問題から通常の診療上の採血の際に追加で10mlを多く血液採取することとしており、保存までに時間がかかるのを避けられない。外来での採血については、院内の採血部門に依頼し、採血時に10mlを多く採取し、そのまま同部門で血漿を抽出して冷凍保存するシステムを整えた。入院中の採血については看護師が早朝に行うため、その際のタイムラグについては解決が難しい。通常の採血とは別に血液採取を行う方法への変更を検討している。 EBV関連上咽頭がんについても症例を集積しているが、もともと頻度の高い疾患ではないため十分な症例数が集まっていないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
p16陽性中咽頭がんについては、ctDNAの検出率を高めるために血液採取方法、保存方法の変更を検討している。条件設定が変わってしまうため、これまでに集積した25例については頭頸部癌学会で報告した内容をベースとして論文を作成している。現在、英文誌に投稿中であり、研究期間内の採択を目指す。 EBV関連上咽頭がんについては症例が限られるため、長期的な症例集積が必要となると考えられる。これまでの集積は4例のみなので、p16陽性中咽頭がんと同様に血液採取方法、保存方法を変更し、あらためて症例の集積を行っていく。 上記以外の頭頸部扁平上皮癌に対して、ゲノム解析を行なって腫瘍特異的な変異を検出し、これらをターゲットとしてctDNAを検出することを検討している。腫瘍特異的な変異に対するプライマー、プローブの作成、条件検討をすすめていく。血液採取、保存条件の変更後、ctDNAが検出可能かどうかを検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
血液採取の方法や保存条件の見直しを行っていること、HBV関連上咽頭がんおよびp16陽性中咽頭がん以外の症例についての症例集積および解析が開始できていないことから、本年度は執行額が少なくなった。次年度、これらの症例の集積、解析を開始することにより必要な物品等が増えることから、次年度これらを使用する。
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