本研究では、従来の方法と比べて非常に高感度かつ再現性高く遺伝子変異や増幅を検出することが可能なデジタルPCRを用いて血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の解析を行い、頭頸部がんの新規バイオマーカー、特にこれまで実用化されていない「治療効果判定」および「再発予測」のバイオマーカー確立を目的としている。 頭頸部がんの中でも腫瘍組織由来のDNA中にウイルス由来DNAが検出されることが明らかとなっているEpstein-Barrウイルス(EBV)関連上咽頭がんならびにヒトパピローマウイルス(HPV)関連のp16陽性中咽頭がんをまずは対象として症例集積および解析を行っている。p16陽性中咽頭がん症例では25例が集積され、初回治療開始前の時点で25例中14例(56%)においてctDNAを検出可能であった。一方で、他のがん症例4例においてはいずれも検出されなかった。上記について、第56回癌治療学会において報告した。さらに、ctDNAが検出された14例全例において、初回治療後にctDNAは消失した。14例のうち2例に再発を認めたが、いずれの症例でもctDNAの再陽性化が確認され、そのうちの1例では治療により再びCRとなり、ctDNAも再陰性化した。この結果からctDNAは治療効果判定や再発予測のバイオマーカーとして有用である可能性が示唆され、第43回日本頭頸部癌学会において報告した。さらに、同内容をまとめて論文化し、Scientific Reportsに掲載された。 一方、EBV関連上咽頭がんはもともと疾患頻度が高くなく4例のみの集積であった。3例でctDNAが検出され(75%)、p16陽性中咽頭がんと同様にバイオマーカーとしての有用性が期待されるが、症例数が限られているため症例を増やしての検討が必要である。
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