加齢性難聴はコミュニケーション障害をきたし高齢者の孤立、抑うつ、認知機能低下にも繋がり、国民的課題であると言えるが、有効な予防法や治療法は確立されていない。加齢性難聴の組織学的所見については過去にも報告があり血管条の萎縮はそのひとつとして挙げられるが、血管条を含む蝸牛外側壁の立体構造についての研究はほとんど行われていない。研究者は連続切片走査型電子顕微鏡法により、これまで観察が困難であった蝸牛外側壁の構成細胞、特に根細胞の立体配列について、蝸牛外側壁のラセン靭帯下部領域において樹木根状の細胞集塊を形成し、II型線維細胞が分布するラセン靭帯下部領域に伸展していることを既に示し報告した(Shodo et al. Biomed Res 2017)。この手法を応用し、蝸牛外側壁構成細胞の加齢性変化を3次元的に解明することを目的とする。研究計画に基づき、令和2年度は正常モデルと加齢性難聴モデルの観察を行った。電子顕微鏡での観察、デジタルデータの三次元再構築で解析を試みている。総合的に進捗状況としては遅れている。
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