本年は自閉症モデルマウスを用いた聴覚中枢における解析の結果をまず整理した。免疫染色による検討では、生後10日齢の聴覚形成期CD38KOマウスの蝸牛神経核において、WTマウスと比較し、ミクログリア数と細胞面積の減少を認め、聴覚形成期に、聴覚中枢である蝸牛神経核においてミクログリアの形態変化が起きており、さらに自閉症モデルCD38KOマウスでは、野生型とは異なるミクログリアの形態変化が起きていることがわかった。聴性脳幹反応では、野生型マウスと比較してモデルマウスでは聴力閾値の上昇はみとめないが、潜時の延長をみとめた。特に、Ⅴ波で有意に遅延しており、聴覚中枢の中でも中脳に存在する聴覚中枢の一つである下丘での異常が疑われた。電顕による検討では、下丘において髄鞘厚が優位に薄く、また神経細胞間のシナプス数と分布にも有意な異常をみとめた。これらより、自閉症モデルマウスにおいては聴覚中枢におけるミクログリアの異常が、聴覚獲得期にあり、さらに、発達後においては聴覚中枢における髄鞘、シナプスの異常と、聴覚伝導の遅延を起こしていることがわかり、それにより行動異常を引き起こす一因となることが考えられた。
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