研究実績の概要 |
これまでの研究にてFZD7の発現を抑制すると細胞の浸潤能が低下することが分かり、FZD7は癌の浸潤・転移に関与することが予想された。癌の浸潤は上皮間葉移行によって生じる。FZD7が転移に関与しているならば、FZD7発現抑制株では上皮系マーカーの発現が上昇し、間葉系マーカーが低下してるはずである。 そこでsiRNAを用いて咽頭癌細胞株T3M-1のFZD7を発現抑制し、上皮系マーカー、間葉系マーカーであるE-cadherin、N-cadherin、Vimentin、Fibroectin、Snail等の発現をreal time PCRとWestern blottで確認した。 まずreal time PCRでは上皮系マーカーのCDH1(E-cadherin)の発現は軽度上昇していた。間葉系マーカーの発現は低下すると予想していたが、CDH-2(N-cadherin),Vimentinの発現は上昇していた。Snailは発現変化が見られなかった。 また、発現抑制作業後72時間で抽出したタンパクを用いたWestern blottにおいては、E-cadherin、N-cadherinの発現はやや低下していた。Vimentinは発現が上昇していた。Fibronectinの発現は不変であった。 real time PCRとWestern blottで異なる結果となっており、タンパク発現が経時的変化している可能性が考えられる。今後、24時間、48時間でのタンパク発現も確認したい。また、必ずしも上皮系マーカーが上昇し、間葉系マーカーが低下するわけでなく、FZD7の抑制のみでは影響を受ける分子と受けない分子が存在していることが示唆された。また、今回はsiRNAによってFZD7の発現を抑制したが、抑制が不十分で機能解析がうまくできなかった可能性もある。今後FZD7ノックアウト株を樹立して検討したい。
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