研究実績の概要 |
ANCA関連血管炎の発症および再燃には、ANCA産生のトリガーとなり好中球を活性化させる細菌感染の関与が考えられている。ANCA関連血管炎性中耳炎の発症トリガーにおける細菌、またはウイルス感染の関与について調べるため、ANCA関連血管炎性中耳炎患者と、通常の成人滲出性中耳炎患者より採取した中耳貯留液中の細菌及びウイルス検出率を比較検討した。 中耳貯留液沈渣よりDNA/ RNAを抽出し、細菌(8種類: Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenza, Mycoplasma pneumoniae, Chlamydophila pneumoniae, Legionella pneumophila, Streptococcus pyogenes, Staphilococcus aureus, Moraxella catarrhalis )および、ウイルス(11種類: Human respiratory syncytial virus A, B, Human parainfluenza virus 1, 2, 3, Human metapneumovirus Influenza virus A, B, Human adenovirus, Human bocavirus, Human rhinovirus)をreal time PCRを用いて同定した。 その結果、ANCA関連血管炎性中耳炎患者と、成人滲出性中耳炎患者の中耳貯留液中の細菌、及びウイルス検出率は低く、検出される細菌像にも差はなかった。ANCA関連血管炎性中耳炎の発症トリガーとして細菌感染の関与は証明できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、炎症局所での、血管炎進展に関わる免疫応答を解明するため、患者血清、及び中耳貯留液上清中の、TNF-alpha, IL-1beta, IL-4, IFN-gamma, IL-6, IL-10, TGF-beta、IL-17といったヘルパーT細胞、制御性Tリンパ球やTh17細胞の分化に関与する 各種サイトカイン濃度を測定し、各種サイトカイン抗体、標的分子阻害抗体投与における 慢性炎症の抑制の有無を含めてサイトカインネットワーク動態について調べる。
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