声帯に器質的異常のない音声障害(痙攣性発声障害、心因性失声症、本態性音声振戦症)では脳活動の異常がその病態として推定されているが、対症療法のみ存在し病態に応じた治療法は確立されていない。また咽頭期が原因の嚥下障害では、咽頭の感覚や運動を改善するような治療が必要であるが、各種リハビリは行われているものの統一した手技や効果のエビデンスに乏しく、嚥下機能を早期に向上させるような治療法は確立されていない。 経頭蓋直流刺激(transcranial direct current stimulation; 以下tDCSと略す)は経皮的に脳組織へ弱い直流電流を流す事で脳神経の活動を修飾するもので、脳卒中回復期リハビリ、鬱病などの治療として臨床で用いられつつある。 本研究の目的は、声帯に器質的異常のない音声障害、咽頭期が原因の嚥下障害の脳活動をまず計測し、これらの症例に対してtDCSにリハビリテーションを併用した治療を行った後、その効果を検証し、さらに治療後の脳活動を測定することでその変化を脳活動の観点からも検証、より効果を上げる治療法を確立しようとするものである。 現在、tDCSを器質的異常のない音声障害に対して文章朗読と併用して行い、一時的に症状の改善がみられる症例も認めた。特に痙攣性発声障害では刺激終了時に明らかに症状が改善している症例もあった。しかし客観的な指標で改善は認めず、症状の持続も一時的であった。 嚥下障害に対しては適切な症例が存在せず研究を行うことが困難であった。
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