中咽頭癌では約50%でヒトパピローマウイルス (以下:HPV)が検出され、HPV感染が発癌に関わっていることが明らかになってきた。HPVは現在200種類以上が同定されているが、中咽頭組織から検出されるHPVは約90%がHPV16型である。一方、喉頭では低リスク型HPV6/11型の感染が多く、HPV16型は時に喉頭癌で見られるのみである。HPV6/11型は良性疾患である再発性喉頭乳頭腫を形成する。このようにHPVは型ごとに感染しやすい組織が異なるが、組織特異的感染メカニズムはよくわかっていない。そこで、本研究ではHPV16およびHPV6/11型の感染の鍵となっているHPV受容体を同定し、HPVの組織特異的な感染メカニズムの解明をめざす。先行研究では細胞株を用いた実験をしており、その結果組織特異性が説明できていない可能性もあり、本研究では実際の組織を用いて行うこととした。 HPV6型、11型、16型のVLPを作製し、手術等で採取した正常の中咽頭組織・喉頭組織から抽出した膜タンパクを用いてVirus over-ray protein binding assay(以下VOPBA)を行った。しかし、バンドが多くゲルの切り出しが困難であったために免疫沈降法を用いた後に質量分析にかけたが有意なタンパクは見つけることができなかった。 喉頭乳頭腫が再発を何度も繰り返すことから、HPVが巧妙に宿主の免疫から回避し持続感染するメカニズムを有していると想定された。そのため、toll like receptor(以下TLR)の発現を喉頭乳頭腫で検索したところTLRの発現とウイルス遺伝子発現に有意の相関を見つけ出した。
|