研究実績の概要 |
遺伝性難聴は先天性難聴の約6割を占めるとされ、1人/1000出産と高頻度に認められるが、未だ根本的な治療法開発は進んでいない。遺伝性難聴の一つDFNA1(deafness, non-syndromic autosomal dominant, the first type)は、アクチン重合促進因子DIA1の遺伝変異により引き起こされるが、長らくその難聴発症メカニズムはわかっていなかった。我々は日本人難聴者家系からDFNA1新規変異体、p.R1213X/p.R1204Xを報告し、そのモデルマウス(DIA1-TG)の作製・解析により、機能獲得変異による恒常的活性型DIA1と進行性難聴との関連を明らかにした(Ueyama 2016)。しかしながら依然として、DIA1の蝸牛における生理的機能や発現細胞種、および細胞内局在については明らかにされておらず、DFNA1による難聴克服のためには、より詳細な難聴発症メカニズムの解明が求められていた。本研究では、新たにDIA1変異体を発現するノックインマウス(DIA1-KI)を作製し、DIA1分子の蝸牛有毛細胞における細胞内局在を明らかにした。これにより、DFNA1における難聴は蝸牛有毛細胞頂側結合を中心に引き起こされることが明らかとなった。更に、DIA-TGに於いては、潜在的に蝸牛有毛細胞の脆弱性を有することを見出し、騒音暴露によりDFNA1の進行性難聴が増悪する可能性が示唆された。最終年度ではこれらの研究成果を論文として発表し、国内および国際学会で報告した。
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