遺伝性難聴をはじめ、加齢性難聴、騒音性難聴などの感音性難聴は外有毛細胞へのストレス負荷から外有毛細胞の不可逆的な変性をきたす。しかしながら各病態における初期の外有毛細胞の機能障害の解剖学的生理学的な解明は進んでいない。 本研究では従来2次元でしかとらえられていなかった、外有毛細胞の超微細構造を、収束イオンビーム搭載走査型電子顕微鏡(FIB/SEM)を用いて得られた連続断面画像をもとに3次元構築することによる可視化することを試みた。具体的にはC57BL/6J系マウス約3週齢を用いて、聴性脳幹反応(ABR)を測定し、聴力が正常であることを確認したマウスを正常蝸牛モデルとして使用した。マウスから取り出した蝸牛をエポン樹脂に包埋したブロックから蝸牛感覚上皮の水平断を作成し、収束イオンビーム搭載走査型電子顕微鏡(FIB/SEM)を用いて外有毛細胞を20nm間隔のFIBによる断面加工を行い、走査型電顕(SEM)を繰り返すことにより外有毛細胞全体の連続画像(約400枚、計8μm厚)を得た。これらのSEMの連続画像からsubsurface cisternaeや細胞膜のデジタル描写によるトレース画像を作成。画像処理ソフトであるAmiraによりグラフィック化し、細胞全体のCSの立体構築及び細胞膜も同様に立体構築し細胞側壁構造全体を立体的に可視化することを試みた。 本研究を通して、これまで平面断面像でしか観察し得なかった外有毛細胞の構造をFIB/SEMによる技術を用いることによって3Dイメージとして構築し示すことが可能になった。この技術を用いることによって、遺伝性難聴、加齢性難聴、騒音性難聴の病理モデルマウスにおける外有毛細胞の形態の変化を立体的にとらえることが可能になり新たな病態解明への道を示すことができた。
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