研究課題/領域番号 |
18K16860
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
酒井 昭博 東海大学, 医学部, 准教授 (20384886)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 選択的スプライシング / CPSF1 / RNA-Seq |
研究実績の概要 |
近年、遺伝子変異以外の発癌機構として遺伝子発現の下流である転写後調節レべルの選択的スプライシングによる発癌機構が明らかになってきており、このスプ ライシングによる発癌機構が頭頸部癌の発癌に重要な役割を果たしている可能性が十分ある。本研究の目的は頭頸部癌における選択的スプライシングを介した発 癌機構を次世代シーケンサー解析を用いて解明し、新しい治療標的となりうるかどうか検討することである。昨年度までの結果で、CPSF1が頭頚部癌に対して発癌に関与していることが示唆された。 そのため、CPSF1遺伝子強制発現・誘導ノックダウン安定細胞株の作成しそれぞれのphenotypeを細胞増殖試験、細胞浸潤試験、コロニー形成試験、アポトーシス試 験を用いて検討した。その結果、誘導ノックダウン安定細胞株ではDOX刺激により、細胞増殖が抑制された。また細胞浸潤試験、コロニー形成試験では浸潤、コ ロニー形成が抑制され、アポトーシス試験ではアポトーシスが更新するという結果であった。遺伝子強制発現株では細胞増殖が更新するという結果であった。 以上よりCPSF1が発癌を促進する結果が得られたため、それぞれの細胞株よりRNAを抽出し、RNAシーケンス解析を行った。Rを用いた独自の解析パイプラインを用いて、変動スプライシング変異の検出を行った。 その結果、CPSF1の遺伝子変異は幅広く癌関連遺伝子のスプライシング変異を誘発するという結果であった。またSingle sample Gene Set Enrichment Analysisを行いパスウエイの検討も行ったが、CPSF1は多くの癌関連のgene setを変化させていることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属施設内の人員の移動に伴い、臨床業務が増加してしまったため、実験に費やすことのできる時間が減少した。そのため予定よりやや実験が遅れてしまう結果となったが、結果は順当であり大幅な遅れは生じてはいない。
|
今後の研究の推進方策 |
今までの研究で、CPSF1を含むスプライシング遺伝子の発現変化は異常なスプライシング変異発現を誘発することにより、発がんに貢献する可能性があることがわかった。今後の研究の方策としては、以下のように考えている。 ・細胞株を用いた実験との比較検証:細胞株より得られたスプライシング変異が臨床検体から得られたデーターと重複するかどうか、解析を行う。もし細胞株、TCGAデータ、臨床検体から共通に得られたスプライシング変異が検出できた場合、それがキーとなるスプライシング変異の可能性あり、それを用いて次のステップを行う。 ・臨床検体を用いた実験的検証:臨床検体よりRNAを抽出し、cDNAを作成。スプライシング変異を同定可能なprimer、probeを設計し、それらを用いてqRT-PCRによりスプライシング変異の実験的検証を行う。 ・臨床病理学的解析:CPSF1過剰発現と、(1) 腫瘍径、分化度、組織亜型、脈管侵襲など 病理組織学的因子、(2) 術後経過、再発の有無、 (3) 治療感受性、副作用発症の有無などとの関連を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の世界的流行により、国際・国内学会が全てオンラインとなり、参加費、渡航費が発生しなかった。またin silicoの解析が多く、実費がかからなかったのも理由である。次年度は、更に研究をすすめるべく、細胞学的な検討、臨床検体を利用した検討も行う予定であり、抗体を含む試薬の購入、実験機器の購入に当てる予定である。
|