常染色体劣性遺伝形式を示す先天性かつ進行性の難聴(甲状腺腫を伴う場合もあり)の原因遺伝子であるSLC26A4遺伝子は陰イオン交換膜タンパクであるペンドリンをコードしている。しかしそれぞれの遺伝子バリアントがどのようにペンドリンタンパク機能に影響するのかに関しては検討が行われていなかった。 そこで本研究においてはSLC26A4遺伝子バリアントがどのようにタンパクの機能に影響するのかに関して、in vitroにおいて効率的に定量化することのできる方法を開発した。遺伝子型と表現型の相関を明らかにするために本法はHCO3-とCl-の交換能およびI-とCl-の交換能を別々に評価することが可能な形で開発を行い、さらにエクソン上のミスセンスバリアントがいかにスプライシングへ影響するかに関する検討を行うために、エクソントラップベクターを用いたin vitroスプライシングアッセイも合わせて行った。 それらの方法を用いてこれまでに報告されているバリアントおよび研究代表施設において同定された新規バリアントに関しての検討を行い、その結果から病的バリアントと非病的バリアントを判別可能とするとともに、表現型に関する検討を行った。また薬剤スクリーニングを行うことにより、バリアントタンパクの機能を改善することのできる薬剤を同定した。 また、本遺伝性疾患に限らず甲状腺腫の切除においてどのような症例における手術が、誤嚥や嗄声の原因となる術後性反回神経麻痺のリスクが高いかに関する検討を行った。 以上の結果を査読付き英文学術誌、国内学会および海外学会において発表を行った。
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