研究課題/領域番号 |
18K16871
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 正宣 北海道大学, 医学研究院, 助教 (70455658)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 鼻粘膜上皮細胞 / TLR3 / 自然免疫シグナル |
研究実績の概要 |
本年度もヒト初代継代鼻粘膜上皮細胞(primary human nasal epithelial cells; pHNECs)を培養し、Toll-like receptor (TLR)の各種アゴニストを投与し、multiplex assayなどでサイトカイン発現を網羅的に検討した。特にTLR3のアゴニストとして知られるPoly(I:C)については、他の自然免疫制御薬剤との共刺激も検討した。結果、数多のサイトカインのみならず、ウィルス受容体を含めたタンパク質発現がSIRT1やPoly(I:C)によって制御されていることが判明した。一方で、Poly(I:C)以外のTLRアゴニストは、タンパク質の発現に与える影響は限定的であった。このことからは、鼻粘膜上皮細胞にはTLR3特異的な自然免疫応答が存在する可能性が考えられた。TLR3はdsRNAを特異的に認識するレセプターであること、ウィルス増殖の際にはdsRNAが産生されること、また、急性鼻炎の多くはウィルス感染に起因することをあわせて考えると、この鼻粘膜上皮細胞におけるTLR3特異的な自然免疫応答は、生体において合目的的な機構と考えられた。 また、同じサイトカインファミリーやウィルス受容体ファミリーの中にも、TLR3刺激で発現が変化するものとしないものが確認された。TLR3刺激はNFkB経路とIFN経路にてタンパク質の発現を誘導する事が知られている。タンパク質の種類によって、責任となる上流シグナル伝達の関与が違うことが想定された。この違いを明確にすることによって、タンパク質の選択的な発現制御を志向できると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにVitroの実験系を最適化し確立させることができている。また鼻粘膜上皮細胞の細胞回収・継代効率を上昇させることにも成功している。従来よりも効率的に解析を進めることができるようになっている。サイトカイン産生のみならず、ウィルス受容体のタンパク質の発現に与える影響についても解析を進めることができており、一部においては従来の想定以上に研究を進展させることができている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに鼻粘膜上皮細胞におけるTLR3特異的な自然免疫応答について概要が明らかになりつつある。今後は、その特異性をもたらす機序について検討を重ねていきたい。具体的には、TLR3以外でも反応するCell line(HEK293、Beas-2B)とprimary human nasal epithelial cells; pHNECsにおいて、NFkBやIFNを構成する因子(IkB, IKK, TAK, IFN, IRSEなど)の発現量の変化、リン酸化、ユビキチン化などのタンパク質の翻訳後修飾の変化などを検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で手術件数が減り、取得できたサンプル数が予想よりも少なかった。幸いなことに手術件数は回復基調にあり、この調子で来年度も引き続きサンプル回収に努め、細胞培養を行いタンパク質の発現解析を進める予定である。
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