研究課題
本年度もヒト初代継代鼻粘膜上皮細胞(primary human nasal epithelial cells; pHNECs)におけるサイトカイン発現・分泌制御機構の解明を行った。具体的にはToll-like receptor (TLR)の各種アゴニストを投与し、multiplex assayやmicrofluidic qPCR法などでサイトカイン発現を検討し、その時間依存性、濃度依存性を検討した。特にTLR3のアゴニストとして知られるPoly(I:C)については、他の薬剤とも共刺激を行い、その薬剤の影響も確認した。結果、数多のサイトカインのみならず、ウィルス受容体を含めたタンパク質発現がSIRT1やPoly(I:C)によって制御されていることが判明した。一方で、Poly(I:C)以外のTLRアゴニストは、タンパク質の発現に与える影響は限定的であった。このことからは、鼻粘膜上皮細胞にはTLR3特異的な自然免疫応答が存在する可能性が考えられた。TLR3はdsRNAを特異的に認識するレセプターであること、ウィルス増殖の際にはdsRNAが産生されること、また、急性鼻炎の多くはウィルス感染に起因することをあわせて考えると、この鼻粘膜上皮細胞におけるTLR3特異的な自然免疫応答は、生体において合目的的な機構と考えられた一方で、疾患によってはこの応答が生体にとって不利に働くことも判明した。これまでにResveratrolやFluticasoneによってこの反応を抑制できることを示唆するデータを得ている。しかし、これらの薬剤は他の多くの遺伝子発現にも均一に影響を与えてしまう。そのため単一の遺伝子発現のみを評価するのではなく、包括的な発現変化を検討する必要があると考えられた。また、ResveratrolやFluticasoneは細胞内シグナルの様々な因子を制御するが、より特異的な制御因子を同定できれば、タンパク質の選択的な発現制御を施行できるとも考えられた。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 図書 (1件)
Rhinology Journal
巻: - ページ: -
10.4193/Rhin22.405
Laryngoscope Investigative Otolaryngology
巻: 7 ページ: 943~954
10.1002/lio2.873
Otology & Neurotology
巻: 43 ページ: e337~e343
10.1097/MAO.0000000000003431
Journal of Asthma and Allergy
巻: Volume 15 ページ: 187~195
10.2147/JAA.S348513