研究課題
内耳において内リンパ嚢は内リンパの吸収に関わる役割を担っており、その機能の破綻は先天性難聴で最も多い内耳奇形である前庭水管拡大症を引き起こす。 内リンパ嚢の細胞は2種類で構成され、そのうちの一方の細胞であるMitochondria rich cell (MRC)はイオン輸送に関わっており、前庭水管拡大症の原因遺伝子 を複数発現していることからも、このMRCの異常が前庭水管拡大症の直接の要因であると考えられる。もう一方の細胞であるRibosome rich cell (RRC)は、内リ ンパ嚢の形態維持に関わるとともに、MRCの前駆細胞の役割も果たしている可能性が、遺伝子プロファイル解析によって示唆された。 本研究の目的は、内リンパ嚢の2種類の細胞がどのような機構で分化するかを明らかにすることにある。本研究で得られた成果から、MRCへの分化誘導を促進させる因子を同定し、前庭水管拡大症の治療法の確立につながることが期待できる。野生型マウスから内リンパ嚢を採取し、組織培養系実験プロトコルの構築を行った。日齢0-5のC57BL/6Jマウスを断首にて安楽死させた後、 両側の内耳を採取し、さらにマイクロダイセクションで内リンパ嚢を採取し嚢状の構造を保った3次元培養および、嚢を2枚におろして上皮シートとして平面培養とする、二つの手法を試みて必要な培地やスキャフォールドの最適化を試みた。種々の方法を試みたが、内リンパ嚢を培養し維持する際に上皮の収縮などがおこり、顕微鏡検査が可能な安定した形態を保つことに問題が生じた。内リンパ嚢MRCによるイオン輸送および水吸収作用が影響していると考えられた。引き続き培養条件の最適化を試みるとともに、シングルセル解析による分化誘導因子の同定を行う予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
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