研究課題
申請者は、シラカンバ花粉で全身感作させたマウスにリンゴを経口投与することで、全く報告例のない新規口腔アレルギー症候群モデルマウス(PFASモデルマウス)の作製に成功した。PFASモデルマウスでは、シラカンバ花粉の腹腔内投与による全身感作後に同抗原を経鼻感作させる。その後リンゴを経口投与する。PFASモデルマウスではリンゴ経口投与後に、口かき動作を認める。口かき動作はOAS症状と酷似しており、ナイーブマウスにリンゴを投与しても決して認められない。申請者は、このモデルマウスを用いて口腔アレルギー症候群の発症機序・病態解明に関する様々な研究を行っている。IgEシグナリングが抑制されているFcεR1欠損マウスをPFASモデルマウスに適用すると、野生型マウスに比べて明らかにリンゴ経口投与後の口かき回数が抑制された。また肥満細胞欠損マウスでも、野生型マウスに比べて口かき回数の抑制が認められた。つまり申請者が作製した新規PFASモデルマウスにおいて、口かき症状にはIgEを介した肥満細胞の役割が必須であった。また、IL-33欠損マウス、TSLPR欠損マウスをPFASモデルマウスに適用した。IL-33欠損マウス、TSLPR欠損マウスでは、野生型マウスに比べて、血清特異的IgEの低下、活性化Th2細胞の抑制、リンゴ経口投与後の口かき回数の低下を認めた。これらの結果からIL-33やTSLPが口腔アレルギー症候群において重要な役割を担っている可能性が示唆された。PFASモデルマウスにおいて、りんご経口投与の刺激は、口腔粘膜の好酸球浸潤、Th2サイトカイン産生能、ILC2sの増加を認めなかった。PFASは花粉と食物の交差反応によって生じるIgEシグナリングを介して肥満細胞、またアレルゲンやプロテアーゼを介してIL-33やTSLPによって即時反応が生じる。
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