本研究は、好酸球性副鼻腔炎における鼻茸形成、難治性を引き起こすメカニズムを解明することを目的としており、好酸球性副鼻腔炎の鼻茸に発現するILC2の効果に着目している。マウスモデルを用いて、ILC2が鼻粘膜炎症(鼻粘膜肥厚および好酸球浸潤、ステロイド抵抗性)に影響を及ぼすメカニズムを解明する。 ①ILC2が鼻粘膜炎症を増悪する因子Xiを網羅的に同定するためMicroarrayを行った。鼻粘膜にILC2が誘導されるpapain点鼻群、OVA+papain点鼻群において、有意に上昇を認めていた候補因子を選別した。Real time PCRで確認を行い、2つの因子でpapainにより有意に上昇することを確認した。 今後、IL33 KOマウスでこれらの因子の変化、phenotypeの変化を見ることができれば、ILC2による鼻粘膜炎症の解明に繋がると考えている。 ②好酸球性副鼻腔炎において、鼻茸のalternative activated macrophage (M2 macrophage)が鼻茸形成に関与する可能性を示唆する報告がある。ILC2による鼻粘膜肥厚増悪へのM2 macrophageの関与を検討した。ILC2が鼻粘膜に誘導されるOVA+papain点鼻群では、PBS点鼻群、OVA点鼻群と比較し、Arginase(Arg)1の発現が有意に増加した。OVA+papain点鼻群でST2R KOマウスはWTマウスと比較しArginase(Arg)1の発現が有意に抑制された。つまり、papainにより活性化したILC2が鼻粘膜炎症を増悪する過程で、Arginase(Arg)1が関与している可能性が示唆された。Arginase(Arg)1は、M2 macrophageを特徴づけるmRNAの一つであり、ILC2による鼻粘膜炎症増悪にM2 macrophageが関与している可能性が考えられる。
|