研究課題/領域番号 |
18K16887
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大薗 芳之 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10724768)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 内耳 / 平面細胞極性 / 細胞骨格 |
研究実績の概要 |
Dapleノックアウトマウスは水頭症になることは既報で知られていたが、まず聴覚について異常がないかどうか検討した。Dapleノックアウトマウスは強大音には反応するため聾ではなかったが、聴力を聴性脳幹反応測定を用いることで詳細に観察した。この結果、Dapleノックアウトマウスはワイルドタイプと比して難聴があることが示された。この原因は細胞平面極性に異常による、蝸牛管伸長、内耳有毛細胞の異常によるものであると予想されたため、内耳の観察を行った。まず、内耳の外観を比較したが、Dapleノックアウトマウスの蝸牛管は、2回転半の蝸牛管であることが確認され、ワイルドタイプと比較しても蝸牛管の進展に異常があり短くなっているような現象は確認されなかった。また走査電子顕微鏡にて内耳有毛細胞の表面を観察し、外有毛細胞、内有毛細胞の配列には異常がないことは確認されたが、蝸牛有毛細胞の上皮面に生える、聴毛であるステレオシリアの配列、また一次繊毛の一種であるキノシリアとの位置関係に乱れがあることを示した。更にこの原因を深く追求するために、既報の細胞骨格、特に微小管とのDapleの関係性を重視し、微小管の上皮面における広がりについて、免疫染色を用いDapleノックアウトマウスとワイルドタイプを比較しているところである。並行して、透過電子顕微鏡での上皮面細胞骨格試料作製、微小管阻害剤投与下の内耳器官培養の観察を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進んでいる。科研費交付の直前2017年12月にDapleの内耳に関する論文は海外から論文で報告されてしまったため、当初の予定とは変更せざるを得なかった部分はあるが、既報にはないDapleノックアウトマウスの聴覚機能検査も完了し、内耳有毛細胞の聴毛の外観の異常についてもまとめることは完了した。研究内容の発表には至っていないものの、現在は内耳有毛細胞における細胞骨格、特に微小管とのDapleの関係性について検討をすすめ、免疫染色、電子顕微鏡、器官培養を用い、成果としては新たな知見が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は本科研費の最終年度であるため、現在進めている蝸牛における微小管とDapleの関係を示す免疫染色、電子顕微鏡、器官培養等の実験を完了し、まとめて論文として投稿したい。 また、余裕があれば前庭機能についての解析や、平衡斑におけるDaple発現の局在や細胞極性に異常がないかどうかも確認し、内耳における聴覚機能の他、平衡機能にDapleが関与しているかどうかを明らかにし、これについても報告を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料作製のための試薬、免疫染色の抗体の購入に関して、当初複数回の試行、抗体の変更に伴う新たな抗体の購入等により、購入経費がさらにかかるものと予想し、また大阪大学内で実験結果を撮影する顕微鏡利用費もよりかかるものと予想されたが、研究が順調に行われたため、未使用額が生じた。また、旅費についても、大学を通じて安価に抑えることがかのうであった。 次年度も引き続き研究を進めるにあたり、未使用額においては新たな試薬購入等に充てたい。
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