反回神経麻痺による声門閉鎖不全の治療として声帯注入術がある。声帯への注入物としては自家脂肪、コラーゲン、ヒアルロン酸などがあり、異物反応の観点か らは自家脂肪が最も安全性に優れている。しかし、注入物の吸収によって治療効果が持続しないという問題がある。乳房再建や顔面軟部組織再建など、自家脂肪 注入が行われる領域でも注入物の吸収による治療効果消失が問題であったが、近年、脂肪組織由来再生細胞(ADRCs: Adipose-Derived Regenerative Cells)を用 いることで治療効果の消 失を防ぐことが可能となった。本研究の目的は反回神経麻痺モデル動物を用いて高濃度ADRCs含有自家脂肪が、声帯注入後の体積維持に 効果をもつのかを統計学的に検討することである。 今年度はラットの反回神経麻痺モデルの確立、ラット用喉頭直達鏡の作成、内視鏡システムによるラット声帯運動評価システムの確立、ラット脂肪の注入針の選定と加工などである。また、実験手技、動物の手術手技の安定化を行った。また、ラット摘出喉頭から凍結薄切切片を作成する手技を確率した。動物モデルにおける上記特殊手技の確立は、今後すべての声帯研究の足がかりとなる。
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