研究課題
音韻障害を認めた場合には、音に対するイメージが弱いことにより言語発達に様々な問題が出現することが知られている。中でも、音韻障害が特に読み書き障害の原因となりうるとされているが、本邦ではまだ十分に検証が進んでいない。我々は先行研究において、全国の4-12歳の言語習得期前高度難聴児638名の疫学調査を行い、その日本語言語発達について報告してきた。その中で、読み書き障害を有する難聴児は、有さない難聴児と比較して言語発達全般に有意な遅れが出現することや、特に小学校での学力に影響が及ぶことが明らかとなった。2018年度は、こうした、難聴児の読み書きと言語発達の関連について検証し、その内容を英語論文にまとめた。現在、海外の小児耳鼻咽喉科の専門雑誌に投稿し、査読を受けている。現時点で用いられている音韻処理障害の検査バッテリーは、単語や非語の復唱や逆唱などを利用したものであるが、こうした音韻障害の概念や検査方法はまだ一般的には普及していない。さらに、音韻障害とその他の言語発達(コミュニケーション能力、構文、語彙、学力)との関連は明らかではないため、それぞれの関連を検討する目的で、2019度は、音韻検査と言語発達検査を組み合わせた研究計画を策定した。また、音韻障害には家族歴を認めることが多く、遺伝学的な背景が関与していることが考えられているため、この研究計画の中では、音韻障害の原因遺伝子の検索として、発端者および同胞・両親に協力を依頼して血液検査を行い、次世代シークエンサーを用いて遺伝学的学的な背景についても調査を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
音韻障害の病態を検出するために、言語発達検査、音韻検査の一連の検査方法を検討し、実施予定としている。また、遺伝学的検査に関しても、岡山大学病院のバイオバンクと連携を行い、検査および解析について検討した。これらの研究計画は、2018年度に岡山大学倫理員会の承認を受けており、実際の研究体制が構築できている。また、現在、患者のリクルートも行っている。
2018年度には、音韻障害および難聴を有する対象者を2家系検討することができた。遺伝学的検査についても保護者に説明を行っており、同意が得られた場合には、2019年度以降に検査を行い、解析予定である。
(理由)消耗品が安価で購入できたため。(使用計画)2019年度以降に行う遺伝学的検査に使用予定である。
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日本遺伝カウンセリング学会誌
巻: 39 ページ: 145-150
PLoS One
巻: 12 ページ: e0193359
doi: 10.1371/journal.pone.0193359.