研究課題
令和元年度は、前年度から取り組んでいた論文作成を完了し、さらに音韻障害と難聴を有する家系のリクルートおよび遺伝学的検査を行った。まず、論文作成については、難聴児の読み書き障害と言語発達の関連について、感覚器障害戦略研究聴覚分野において収集した546名の高度難聴児のデータの多変量解析を行い、読み書きの能力が特に小学校中学年の学力に寄与していることを報告した。(Sugaya A et al. Int J Pediatr Otorhinolaryngol,2019)この論文では、音韻障害が読み書きの獲得にも影響することを考察し、さらに、難聴児における読み書き障害を早期に発見することで、早期の介入を行い、その後に起こりうる学力低下を予防することが必要と結論付けている。2つ目の課題であった対象者のリクルートと遺伝学的検査であるが、本研究の対象者に協力を依頼し、2家系のうち1家系が遺伝子解析に同意されたため、文書による同意を取得後に、発端者およびその家族計5名に血液検査を行った。本家系では、発端者は生下時からの難聴を認め、幼少時に両側の人工内耳植え込み術を施行されている。現在小学校に在籍しており、術後の聴取能は良好であるが、音韻障害を認めたため、継続した言語訓練を行われている。尚、本児の弟にも生下時からの難聴を認め、両側の人工内耳植え込み術を施行されているが、音韻障害の有無は現時点では不明である。採血に先立って、当院のバイオバンクと打ち合わせを行った。本児およびその家族(両親、姉、弟)に対してエクソーム解析を行うこととし、令和元年8月に採血を行った。その後に当科でDNA抽出を行い、理研ジェネシスに解析を依頼し、令和2年1月に解析結果が返却された。今後は、過去の音韻障害の既知の遺伝子変異から、本症例と合致するものがないか、または新規の遺伝子変異がないかを検証する予定である。
2: おおむね順調に進展している
対象となる音韻障害を有する難聴児とその家族の計5名に対し、血液検査を施行することができた。現在、エクソーム解析の結果が返却されており、今後は、原因遺伝子についての解析を行うことで研究を進める予定である。
過去の文献を参考に、音韻障害の既知の遺伝子変異から、本症例と合致するものがないかを検証する予定であり、さらには新規の遺伝子変異がないか検討予定である。今後は、バイオバンクと連携して解析を進める方針である。また、可能な範囲で対象者のリクルートを継続する予定である。
令和2年度以降も対象者のリクルートを継続して遺伝学的検査を行う予定であり、これに費用を要するため。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
International Journal of Pediatric Otorhinolaryngology
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