研究課題/領域番号 |
18K16896
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
池上 太郎 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00754409)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 喉頭乳頭腫 / ヒトパピローマウイルス / 声帯 / laryngeal papillomatosis / HPV-6 |
研究実績の概要 |
本年は大きく2つのことに取り組んだ。第一に、HPV6のE4、E5a、E5bの3遺伝子に対する蛍光RNAプローブを用いた多重RNA in situ hybridization法を確立した。その結果、3遺伝子は有棘細胞の上層から顆粒細胞層の同一細胞で発現していることが明らかとなった。 第二に、HPV6の各遺伝子の機能解明するために、in vitroでHPVの生活史を再現のための準備に取り組んだ。HPV6は細胞の分化に合わせてウイルスゲノムDNAの複製およびウイルスタンパク質を発現し、乳頭腫を形成することから、生活史の再現には細胞を未分化から分化に誘導する必要がある。そのため、まずヒト表皮角化細胞株HaCat細胞を用いて、培地中のカルシウムイオンの濃度を変化させることで細胞を未分化から分化に誘導する条件を確立した。具体的には、細胞の分化の指標には、細胞の形態がSpindle shape(未分化型)またはcuboidal shape(分化型)であるのか、さらに分化マーカー遺伝子として、InvolucrinとKeratin10の2遺伝子の発現をリアルタイムPCRで定量し、判断した。その結果、HaCatをカルシウムイオン濃度0.06 mMで3週間プレ培養することで、細胞を未分化の状態に誘導でき、その後、カルシウムイオン濃度を1.8 mMに置換し、6日間培養することで細胞を分化した状態に誘導できることがわかった。つづいてHPV遺伝子をHaCat細胞に導入する方法を確立するため、EGFP発現ベクターを用いてHaCat細胞にトランスフェクション法またはエレクトロポーレション法を行い、比較した。その結果、HaCat細胞への遺伝子導入率はエレクトロポーレション法が有意に高かった。これにより、HPV遺伝子導入法が確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
HaCat細胞への遺伝子導入法およびHaCat細胞の分化誘導法が当初よりも半年早く確立することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、導入遺伝子であるHPV6全長DNA(8 kbp)をinverse PCRで増幅し、TOPO XL-2 Complete PCR Cloning Kitでクローニングする。現在までに500コロニーを拾い、HPV6全長DNAが入ったクローンが1クローン得られている(全長8 kbpはシーケンスはまだ完了していない)。今後も引き続き、コロニーを拾い、HPV6全長DNAの入ったクローンの数を1つでも多く得る予定である。その上で、全長をシーケンスし、塩基配列のエラーのないDNAをエレクトロポーレションで遺伝子導入し、カルシウムイオン濃度を変化させ、HPV6の生活史を再現し、HPVの各遺伝子の機能を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月にスペインで開催される国際会議に出席するため旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により出席ができなくなり、残予算が生じた。繰越した分は、次年度に行う各遺伝子の機能解析の試薬代にあてる予定である。
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