上咽頭癌の治療は手術治療が困難な部位にあるため、化学放射線治療が主体となって行われている。その発癌様式についてはEBウイルスが関与することが知られているが、まだ不明な点が多い。 リゾフォスファチジン酸(LPA)は生体内に広く分布する生理活性脂質で、多岐にわたる働きが知られている。その中でも癌細胞に関しては悪性形質の発現に関与することが知られている。LPAの受容体は細胞膜上に7回膜貫通型受容体として存在し、LPA1-6のサブタイプがあることが明らかになっている。2000年初頭までは一次配列相同性が高い(50~57%)LPA1-3の三つのサブタイプのみがendothelial differentiation gene(EDG)型LPA受容体として知られていた。その後、リガンドが不明の受容体(オーファン受容体)の中にLPAをリガンドとするものが次々に発見された(LPA4-6)。これらは分子系統樹上,EDG型LPA受容体群とは遠く離れた位置に存在することから,EDG型LPA受容体とは独立して進化してきたものと考えられ、非EDG型LPA受容体と呼ばれるようになった。 LPA1を介したシグナリングにより、癌細胞の増殖能が亢進することが知られている。一方、LPA4-6を介した作用については不明な点が多い。 申請者らはこれまでに頭頸部癌細胞株においてLPA4を介したシグナリングがLPA1を介したシグナリングに拮抗し、増殖能や遊走能を抑え悪性形質を改変する報告を行った。 本研究では上咽頭癌患者からサンプリングされてた癌細胞組織のLPA1、LPA4、LPA5について発現解析を行い臨床像との相関について調べた。 上咽頭癌患者からのサンプリング組織よりmRNA抽出、cDNA作成を行い、real-time PCRによる解析を行った。
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