先天性難聴は新生児1000名に1名認められる比較的頻度の高い障害であるが、その50%以上が遺伝性難聴と報告されている。難聴は外耳から中耳に原因のある伝音難聴、内耳から中枢性に原因のある感音難聴、その両者に原因のある混合性難聴に大きく分類されるが、遺伝性難聴で現在同定されている遺伝子の多くは内耳(蝸牛)に発現していることより、感音難聴を呈する。そのため、中耳疾患や難聴の原因とされる先天性感染症を伴わない小児の感音または混合難聴症例の中に 遺伝性難聴が含まれると推察される。2018年4月から2020年3月までに横浜市立大学附属市民総合医療センター耳鼻咽喉科外来または2020年4月から2022年3月日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科外来を受診した4歳か12歳までの感音難聴または混合性難聴の症例の中で15例が遺伝性難聴と診断された。そのうち同意が得られた10例について言語発達検査を施行した。日本語の言語力を評価する方法として感覚器障害戦略研 究が提唱している、日本語言語発達検査パッケージ(Assessment of LAanguage Development for Japanese chIldreN:ALADJIN)がある。これは基本的要素であ る音響・音韻といった聴覚的なドメイン(言語)とさらに高度化した語彙・統語と連なる言語的なドメインとから構成されており、小児言語発達期における課題 を抽出することが可能とされている。ALADJINにて使用されている検査バッテリーを使用し、語彙発達、統語発達、総合的な言語コミュニケーション能力の発達ついてそれぞれのデータを収集した。全例で人工内耳装用閾値、語音聴取成績は全例で良好の結果であったが、言語発達は聴覚障害児の全国平均と同程度の症例が多かった。
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