頭頸部悪性腫瘍の約90%を占める扁平上皮癌は、手術療法、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療や、各々の治療の進歩により予後が劇的に改善してきた。しかし、5年生存率はまだ40%程度と高くはない。その理由の一つとして、大半が進行癌で見つかり、進行癌の大半が局所再発、遠隔転移しやすいことが挙げられる。再発した腫瘍は、従来の治療に抵抗性を示すことが多く、有効な治療選択肢が限られているのが現状である。 悪性腫瘍が再発する機序の一つとして、化学療法の繰り返しにより、抗癌剤に耐性な腫瘍細胞が残存し、増殖して再発腫瘍を形成すると考えられている。薬剤耐性獲得の機構を検討することにより、再発腫瘍を対象とした新規治療法の開発が可能となると考えられる。また、腫瘍溶解ウイルスは従来の化学療法と異なる機序で抗腫瘍効果を示すため、新規治療薬の選択肢となる可能性が考えられる。本研究では頭頸部扁平上皮癌UM-SCC-23からシスプラチン、5-FU耐性株を誘導し、薬剤耐性株が親株と比べて細胞増殖能、腫瘍造性能が亢進していることを示した。また、とくに薬剤耐性株において腫瘍溶解ウイルスHF10の抗腫瘍効果が認められたことを示した。以上の結果より再発腫瘍への新規治療薬として腫瘍溶解ウイルスが候補に挙がると考えられた。
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