研究実績の概要 |
先天性高度難聴の発症率は1,000人に1人の割合であり、その約半数は遺伝子の関与があるといわれている。原因となる遺伝子産物の1つであるBrn4はニューロンや、蝸牛細胞の分化に関わる転写因子でありX染色体性の非症候性難聴では最多の疾患であるX-linked deafness type3(DFN3)の原因遺伝子として知られているが、その機序は未だ不明な点が多かった。研究代表者城所淑信はBrn4欠損マウスと先天性難聴で最も高頻度であるCX26(GJB2)変異難聴の間に「ギャップ結合複合体崩壊」という共通の分子病態を持つことを初めて発見した(Kidokoro et al. PLoS One 2014)。これによりギャップ結合を標的とした治療法開発が同疾患にも適用できると予想される。本研究では蝸牛線維細胞およびそのギャップ結合を指標としたBrn4欠損マウス内耳への骨髄間葉系幹細胞移植の最適条件を探索し、Brn4変異型難聴の細胞治療法を開発する。これまで、骨髄間葉系幹細胞の中で、移植に適した細胞集団を選抜するために幹細胞ホーミング機構と呼ばれる分子機構の活性化を解析し、内耳の標的組織への侵入能力の高い細胞、内耳誘導性の間葉系幹細胞の探索を行った。これらの細胞群は間葉系幹細胞の新たな細胞サブセットであると考えられる。これらを用いたマウス内耳への細胞治療実験のため、細胞液投与法の検討を行い、内径70マイクロmの微小チューブの半規管への挿入法を検討し、10~20マイクロlの細胞液を効率的に注入することが可能となった。
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