蝸牛培養細胞株(HEI-OC1)において、ミトコンドリアの動的及び静的な評価として以下の評価を行った。1)ミトコンドリアの動きをOpenCVを使用して特徴点抽出及びoptical flowを算出し連続追跡を行い、拡散係数等を算出し、細胞骨格阻害薬に曝露した上で同係数等を算出し、動的評価を行った。阻害剤によって拡散係数が減少する傾向にあったが、薬剤により上昇する結果も得られた。2)膜電位に異常を認めない活動性ミトコンドリアに蓄積する細胞浸透性の蛍光色素であるTMRE (tetramethylrhodamine ethyl ester)及びJC-1にて染色し、蛍光プレートリーダ及び蛍光顕微鏡により蛍光強度を計測することで膜電位を評価した。条件によって膜電位の変化が異なる結果が多かった。3)電子顕微鏡において、ミトコンドリアの形態の評価を行った。従来の形態学的な画像評価に加え、機械学習によりミトコンドリアの特徴部分を学習させ、自動的に画像上の細胞内のミトコンドリアの部分を判定させて面積を計測するプログラムを使用し、細胞内のミトコンドリアの面積の評価についても併せて行った。4)ミトコンドリア障害モデルでの細胞数の評価を行った。HEI-OC1細胞をPQQ(0.1、1.0nM)に1日間曝露した後、過酸化水素(100μM)を1時間曝露し、ミトコンドリア機能及びSIRT1/PGC-1α経路の機能を評価した。老化モデルでのミトコンドリア呼吸能、ATP産生速度、ミトコンドリア膜電位・融合・運動性の障害はPQQ処理群で保護効果が見られ、SIRT1及びPGC-1αの発現は老化モデルで減少したが、PQQ処理群では有意に上昇し、PGC-1αのアセチル化はPQQ処理群で有意に減少した。
|