研究実績の概要 |
免疫チェックポイント関連分子であるPD-L1の染色態度に関して評価を行った。PD-L1は対象としたほぼ全ての組織において乳頭腫の基底層の細胞に強い発現を示していた。一方、基底層以上の細胞にも染色は見られたものの、染色性に一定の傾向は確認できなかった。PD-L1を含む免疫チェックポイント関連分子は細胞障害性T細胞の活性に抑制的に働くとされる。また、乳頭腫の原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)は基底層に潜伏感染しているとされる。乳頭腫の基底層の細胞へのPD-L1発現がHPVまたは乳頭腫細胞の細胞性免疫からの逃避に関与しているものと推察された。 前年度までに行ったCD8, PD-1, Foxp3の免疫組織化学とその解析から、CD8, PD-1, Foxp3の陽性細胞数はいずれも非再発群の方が多いという結果が得られていた。CD8の結果から、再発群の方が細胞障害性T細胞の数が少ないために、免疫系を介した腫瘍細胞の排除が生じづらいことを意味すると考えられた。また、PD-1とFoxp3の結果から、非再発群では細胞障害性T細胞の働きが免疫チェックポイント関連分子や制御性T細胞によって抑制されている可能性があることを意味すると考えられた。以上より、非再発群における乳頭腫の発生においては、腫瘍局所での免疫に抑制的な因子によって細胞障害性T細胞の働きが抑制されることが乳頭腫一因となっていることが示唆された。また、再発群における乳頭腫の再発においては、腫瘍局所への細胞障害性T細胞の浸潤が少ないことが再発の一因であることが示唆された。 上記の研究結果の一部を第33回日本喉頭科学会のシンポジウムにて講演した。また2022年4月に開催されるアメリカ気管食道科学会のポスター発表に採択された。現在英文誌に論文投稿し、査読中である。
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