研究課題/領域番号 |
18K16913
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
関 優太 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (10615636)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミオシン6 / 難聴 / 内耳有毛細胞 / モデルマウス / アイソフォーム / 不動毛 |
研究実績の概要 |
ヒト/マウスの難聴原因遺伝子であるミオシン6(Myo6)は複数のアイソフォームが存在する。我々は、内耳有毛細胞で高発現する9塩基のマイクロエクソン(miExon)が挿入されたMyo6アイソフォームを同定し、そのアイソフォームのみを欠失したマウスが重度難聴を生じることを明らかにした。本研究は、樹立したマウスの詳細な病態を解明し、その機能を明らかにすることを主要な目的として、本年度は以下の実験を実施した。 ・Myo6-miExon欠失マウスの表現型および発現解析 Myo6-miExon欠失マウスの聴力を聴性脳幹反応(ABR)および歪成分耳音響放射(DPOAE)で測定することにより評価した結果、ABR波形はわずかに得られるものの、野生型と比較して振幅の低下および潜時の遅延が認められた。さらに、外有毛細胞の音刺激に対する反応をDPOAEで調査した結果、その値は検出できなかった。これらのことから、Myo6-miExon欠失マウスの難聴は外有毛細胞の障害を起因とし発症することが示唆された。次に、走査型電子顕微鏡を用いて生後4日齢のMyo6-miExon欠失マウスの不動毛を観察した結果、内有毛細胞の不動毛は野生型と類似していたが、外有毛細胞の不動毛はMyo6突然変異体マウスが示す不動毛の融合や不動毛基底部のtaper領域の消失は認められないものの、不動毛の配向パターンに限定して異常が認められた。さらに、外有毛細胞の平面内極性を制御するPCP(planar cell polarity)の異常が原因で不動毛形態異常を生じることが示唆されたため、線毛マーカーを用いてその形成位置を生後0日齢で調査した。その結果、Myo6-miExon欠失マウスからは野生型では認められないMedial側への移行を示唆するデータが得られた。以上の結果から、3残基挿入MYO6は外有毛細胞の不動毛形成に関与する必須のアイソフォームであり、その発生に重要な役割をもつことが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で計画当初に予定していたMyo6-miExonのタンパク質の精製は、既に用意していたユビキタスに発現するMYO6タンパク質を用いた解析でタンパク精製を再検討する必要があることが判明したため、進行が遅れている。また、Myo6-miExonはマウスにおいて胎齢期での発現が認められ、幼齢期を含む有毛細胞の表現型を中心として解析を進めたため、予定していた有毛細胞で発現する新規MYO6アイソフォームの同定および変異体マウスの作製を本年度は実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の解析によってMyo6-miExonが内耳外有毛細胞において特徴的な役割をもつことが示唆された。次年度はその役割をより詳細に明らかにするため、継続して感覚毛形態の詳細な表現型および発現解析を実施する。また、Myo6-miExonの分子モーターとしての機能を調査するためタンパク質精製後、キネティクス解析を試みる。加えて、新規MYO6 アイソフォームの同定は他生物種間のシークエンスアライメントの結果から有毛細胞での発現を確認し、ゲノム編集個体の樹立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に実施予定としたタンパク質精製および新規MYO6アイソフォームの同定およびゲノム編集個体作製に着手できなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、表現型および発現解析のための試薬等の消耗品購入に使用し、タンパク質精製およびキネティクス解析のための消耗品購入、およびゲノム編集個体作製に使用する。
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