本研究の主目的は、良性発作性頭位めまい症(BPPV)発症への骨代謝の影響について明らかにすることである。BPPV患者群では骨折発生危険度が有意に高いこと(Fracture probability assessed using FRAX in elderly women with benign paroxysmal positional vertigo. Auris Nasus Larynx. 2018)、外側半規管型BPPVにおける半規管結石症とクプラ結石症の間で血中ビタミンD濃度が有意に異なること(Difference in Serum Levels of Vitamin D Between Canalolithiasis and Cupulolithiasis of the Horizontal Semicircular Canal in Benign Paroxysmal Positional Vertigo. Front Neurol. 2019)を報告した。その上でBPPVの診断に関するデータを集めているが、解析に十分でない。 メニエール病は内リンパ水腫が本態と考えられているが不明な点も多い。内リンパ水腫の形成にもBPPV同様、耳石の脱落が関与している可能性がある。めまい発作時の内リンパ水腫を評価することはメニエール病の病態の解明に重要である。めまい発作時のメニエール病患者の内リンパ水腫をMRIで撮像したところ、前庭内リンパ水腫は外側半規管へ嵌入していたが、明らかな膜の破綻を示唆する所見は認めなかった。Nagoya J. Med. Sciへ報告した。 新型コロナウイルスのパンデミックは、社会生活に大きな影響を及ぼした。BPPVを含むめまい疾患で救急外来を受診する患者は多い。めまい疾患の中には心理的ストレスが発症に関与するものもある。パンデミック前後である2019年と2020年で、一般二次病院における救急外来の受診者数について検討した。全体の受診者数が月平均で1857±477から1482±334へ減少した一方、めまい症状での受診者は31.3±8.08から40.8±12.7に増加した(p=0.002、p=0.011)。論文を投稿中である。
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