研究実績の概要 |
眼内悪性リンパ腫や中枢悪性リンパ腫は、難治性の希少疾患であり診断や治療法の開発が進んでいないアンメットニーズの疾患である。これまで眼内悪性リンパ腫の診断は、組織生検が必須であり、また生検をしても採取検体量の問題から診断を確定することが困難である。また、中枢悪性リンパ腫は、脳を生検しなければならず、侵襲度が高く術後の障害をきたすこともある。我々は、これらの問題を解決するために、眼内や髄液から採取された微量な検体からDNAを増幅させて、遺伝子補助診断を行うことを目的とする。これは、低侵襲な手技で補助診断やコンパニオン診断が可能となることを目標とする。 我々は、眼内悪性リンパ腫の原因遺伝子を、多施設共同研究(「眼内悪性リンパ腫の体細胞変異のエクソーム解析の研究」(科研費:基盤C、若手研究 田岡)で、眼内悪性リンパ腫の遺伝子解析を行った。眼内悪性リンパ腫は主に4つの特異的な遺伝子(MYD88,X,Y、Z)で94%(46例/49例)は網羅されることが分かりました。このことから、4つの遺伝子(MYD88,X,Y、Z)で遺伝子の補助診断が可能と考えらえる。微量な検体から遺伝子を同定するため、さらに4つの遺伝子プライマーを同時に増幅させる系を確立することで、微量な検体をデジタルPCRの技術を用いて検出することが可能となった。この技術は特許出願をしており米国特許出願及びPCT特許出願を行っている(米国特許62/785732)。 また、髄液や骨髄においても、同じ検出系を用いて、微量なDNAや、腫瘍割合が少ない検体でも特異的な遺伝子を検出することができるようになっている。眼内悪性リンパ腫の遺伝子による予後解析を行ったところCD79Bの遺伝子変異があると、再発が高率であることが分かった。
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