研究課題/領域番号 |
18K16924
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
須田 謙史 京都大学, 医学研究科, 助教 (70779157)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 網膜神経保護療法 / 点眼治療 / 高比重リポタンパク |
研究実績の概要 |
我々は、VCP蛋白のATPase活性を調整する化合物であるKUS121(以下KUS剤)を生体ナノ材料である高比重リポタンパク(HDL)に内包した点眼剤(以下、HDL_KUS)を実験動物ラットに点眼し、網膜に到達したKUS濃度をHDLに内包していないKUS剤(以下、PBS_KUS)と比較したところ、HDL_KUS点眼群で網膜内KUS濃度が有意に高い結果となったが、再現性実験では同様の結果を得られなかった。この問題点を克服すべく、カチオン性脂質であるDOTAP(1,2-dioleoyl-3-trimethylammonium-propane)やDC-コレステロール(3beta-[N-(N',N'-dimethylaminoethane)-carbamoyl]cholesterol、以下DC-Chol)を含むHDLにKUSを作製した。DOTAPを使ったHDL_KUSでは粒子のゼータ電位は陰性であったがDC-CholをHDL内脂質の10%包含したHDL_KUS(以下、DC10)ではゼータ電位は陽性となり、粒子のカチオン化に成功した。このカチオン性のHDLを実験動物ラットに点眼し網膜内KUS濃度を測定したが、PBS_KUSに対する優位性を確認できなかった。本研究の進捗を妨げている原因の一つは網膜内KUS濃度測定の再現性の低さであり、標本の処理条件や測定条件の検討を行う予定である。また蛋白やKUS剤の構成や配分を変更して検討する余地がある。実験動物ラットに対する点眼試験でPBS_KUSに対して明らかに網膜到達性の高いHDL_KUSの組成が確定できれば、その組成のHDL_KUSの安全性や治療効果を培養細胞や疾患モデル動物を用いて確認する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々は、VCP蛋白のATPase活性を調整する化合物であるKUS121(以下KUS剤)を生体ナノ材料である高比重リポタンパク(HDL)に内包した点眼剤(以下、HDL_KUS)を実験動物ラットに点眼し、網膜に到達したKUS濃度をHDLに内包していないKUS剤(以下、PBS_KUS)と比較した。Preliminaryの実験ではHDL_KUS点眼群で網膜内KUS濃度が有意に高い結果となったが、再現性実験では同様の結果を得られなかった。この問題点を克服すべく、カチオン性脂質であるDOTAP(1,2-dioleoyl-3-trimethylammonium-propane)やDC-コレステロール(3beta-[N-(N',N'-dimethylaminoethane)-carbamoyl]cholesterol、以下DC-Chol)を含むHDLにKUSを作製した。DOTAPを使ったHDL_KUSでは粒子のゼータ電位は陰性であったがDC-CholをHDL内脂質の10%包含したHDL_KUS(以下、DC10)ではゼータ電位は陽性となり、粒子のカチオン化に成功した。このDC10とPBS_KUSを実験動物ラットに点眼し、上記と同様に網膜内KUS濃度を比較したところ、第一回目の実験ではDC10でKUS濃度が有意に高い結果が得られたが、第二回目の実験では再現性を得られなかった。DC10やHDL_KUS点眼における実験動物ラットの角膜障害は認めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の進捗を妨げている原因の一つは網膜内KUS濃度測定の再現性の低さである。この問題を克服するために、標本である摘出ラット網膜のホモジネートの条件や測定に使用している液体クロマトグラフィー/質量分析器(LC/MS/MS)の条件検討を行う予定である。またこれまでHDLの構成脂質を変更して比較検討を行ってきたが、脂質のみではなく蛋白やKUS剤の構成や配分を変更して検討する余地がある。特に現在HDLの構成蛋白は変異型ApoA-Iを使用しているが、別種の蛋白やペプチドで代替する選択肢はあると考えている。実験動物ラットに対する点眼試験でPBS_KUSに対して明らかに網膜到達性の高いHDL_KUSの組成が確定できれば、その組成のHDL_KUSの安全性や治療効果を培養細胞や疾患モデル動物を用いて確認する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた細胞培養実験や疾患動物モデルを用いた実験を施行できておらず、次年度にこれらの実験を行う必要が生じたために予定よりも差額が発生した。
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